その12
パチ屋からの帰りの間、無けなしの金でしこたま酒を買い込んだ。負けた日の夜は飲まなきゃ超えられない。
ぷしゅっといい音を立てた缶ビールをそのまま半分ほど飲む。口にいい感じの苦味が残った所でタバコを吸うと格別に美味い。
「っかー!酒があるからまだ生きていけてるって感じするわー!」
それからテレビを見つつ酒を飲みつまみを食べタバコを吸う驚異の自堕落飲みをかましていたら、いつのまにかベロベロになり寝ていた。
誰にだって1人で酒に飲まれる時間は大事だと思う。優秀な人も愚かな人だって人それぞれ生きてたら辛いことはある。しょうがないと溜め込むより酒を飲んで発散する事が一番の不満解消法だと俺は思う。まぁパチンコで負けただけなんですけど!!
.....あぁ死にたい.....。
目が覚めるとそこは暗い深淵であった.....。
嘘ですカーテン閉めっぱなしで寝たから部屋の中が暗いだけですはい。起きた時真っ暗闇の中だとまだ夢の中かなって思って死ぬほどエロい事しようと思うけどところがどっこい現実でしたされちゃう。
しかしそれにしても暗すぎないか?昨日寝たのが深夜1時とかだからノンストップ一撃12時間寝たとしても昼の1時のはず。冬で日が落ちるのが早いと言えどまだ太陽は空にあるだろ?カーテン突き抜けて日が入ってきてもおかしくないのに。そう思ってカーテンを開けるとそこには月明かりふんわり落ちてくる綺麗な夜の景色が広がっていた。
うーん.....、寝すぎたって奴か。時刻を見ると午後7時。一撃18時間も寝たとは、酒も煙草もしておっさんになってきたかと思いきや体はまだまだ20歳なのか。若いなー。
喉の乾きを癒すため水を飲み煙草に火をつける。丸1日潰れちゃったよ。まぁバイトも休みだし秋に酒持ってきてもらって宅飲みでもしようかな。
そうと決まれば即行動。秋にメールを飛ばしぐちゃぐちゃに散らかった部屋を小綺麗にする。散らばった空き缶といつ開けたかわからない菓子袋などをまとめてゴミ袋に詰め込んで外にだす。布団を狭いベランダに雑に干し部屋用の小さな箒でてきぱきと掃除を始める。掃除はやらないがなにも出来ないことはない。今どきの男子でも家事くらいできないと生きていけない、都合よく家事をしに来てくれる大学の女友達などは鼻っから存在しないのだ。期待はもう1回生の序盤で捨てました。
掃除の楽しさに目覚めてきそうな時、携帯がなる。秋からの返信だった。
『いやいいけどあんた今日デートじゃないの?もう解散したん?』
.............?
.........。
.....!
忘れてたぁぁぁああああああああ!!!!
完全に忘れてた!今日小鳥遊と一応デートの約束してたんだった!約束の時間は!?.....お昼だぁああ!!.....ん?いや待てよ。まずお昼とい定義があまりにも曖昧ではないか?俺だったら午後7時でも全然お昼だと思うし夕方ってゆったら午後10時くらい、夜なんて午前1時っていう感覚だから全然遅刻じゃないな、うん.....現実逃避はやめよう!
後ろめたさを捨てすぐさま小鳥遊に電話をかける。ワンコール終わる前に出てくれた。
「もしもし久我くん!?大丈夫?」
第一声が心配の声。胸が痛む。とりあえずまずは謝罪だ。言い逃れしたい所だが言い訳が思いつかない。自分の非が圧倒的すぎる。
「えっと.....、ごめん!今どこにいる?もう家か?」
会って謝りたい所だが流石に家か。
「まだ駅前で待ってるよ?何か急用が出来たとかかな?なら私帰るけど。」
当たり前のように小鳥遊は答えた。
「え、何時から駅前にいるの?」
「んーと、お昼って言ったけど久我くんのお昼がいつぐらいか分かんなかったから午前の10時くらいからいるよー?」
「10時から!?」
申し訳なさから一転、俺の感情は恐怖へと変わった。正気の沙汰ではない。普通なら連絡の一つくらい入れるだろ!9時間も待つか!?1人でずっと寒い駅前で待ってるってゆうのか今も!?こいつ頭大丈夫なのか!
「マジか...。俺がこんなん言うのもなんだけど帰ろうとか思わなかったん?」
今すぐにでも縁を切りたい。そんな気持ちを抑えて聞いてみる。純粋な疑問だった。
「えー帰ろうなんて思わないよー。まぁ理由なんてないけど強いて言うなら待つのも彼女の仕事かなって。」
照れくさそうな小鳥遊。
俺はとんでもない奴と関係を持ってしまったのかもしれない。まだ付き合って1ヶ月ちょっと、しかも大体の期間は音信不通だったはずなのに.....。愛が深すぎて溺れてしまっている。
「そっか.....。ごめんな。ちょっと連絡出来ないくらい急用が入ってな.....。悪かった。今日はもう会えそうにないからもう家に帰ってくれ。この埋め合わせは必ずするから。本当にごめん。」
たどたどしく嘘をつきながら謝る。早く電話を切りたい、怖い、勘弁してくれ、負の感情達が暴れ出す。
「そっか残念.....。でも仕方ないか。私も昨日急に誘っちゃったし!今度は久我くんから誘ってほしいな!急用が無さそうな日に!じゃあもう帰るね。またね。」
儚げに電話は切れた。
どっと疲れが体を襲い、たはぁーと情けないため息が出る。こえええええええ!!!!めっちゃくちゃ気持ち悪いいいいい!!!9時間も人を待つとかなに!?海賊なら掟を守ってすぐどっかいっちゃうぞ?なにも小鳥遊は悪いことしてないけど縁切りたい。もっと普通の子だと思ってた。
.....でも罪悪感はやっぱりある。考えれば9時間待たされてもおかしいと思わないくらいデートが楽しみだったんだよな、小鳥遊。
あぁくそ!埋め合わせなんて何すりゃいいんだよ。俺に出来ることなんて目押しか金をせびる事くらいだぞこんちくしょーめ。
「はぁ.....。」
疲れた。さっきの電話はかなり堪えた。恐怖と罪悪感が一気に襲うとかどんだけ鬼畜なの。もう俺のライフはゼロよ!
埋め合わせは明日の俺に託してもう寝よう。起きてから1時間も経ってないけどもう眠たくなってきた。
干していた布団を戻し倒れるように夢の中へダイブする。
明日の俺超頑張れ。
「ねー君1人?凄く可愛いね!どっか飲みにでもいかない?すっごく美味しいお酒置いてるバーがあってさ。」
オシャレな格好をした1人の若者が駅前で俯いた女の子に声をかける。俯いて顔は見えないけどとりあえず可愛いと褒める。褒めるのはナンパの基本だとネットで読んだらしい。
「いえ私これから帰る所なんですみません。」
風邪なのか少し鼻声でそそくさと駅に逃げていかれた。
「ちっ、なんだよくそが。そんな素っ気なくしなくてもいいだろうがよ。」
ナンパ失敗に大いにイラつく彼は空を蹴る。
「ん?今日雨降ったっけか?」
先ほどの彼女がいた地面が雨が降ったかのように濡れていた。
「漏らしたんかな?それならめっちゃウケるな、はは」
とりあえず写メを撮って美味しいネタが出来たことで機嫌を直した彼は、またナンパをしにフラフラとどこかへ歩いていった。




