扉間➂
「とある終演のはなし」のないようにふれます。
再び投げ出されるように扉から放り出される。
元の部屋に戻ってきたことは感覚で分かるが目を開けても視界は白いままだ。
何も見えないままだが気配で誰かが近づいてくるのがわかる。
「あれ?定番のセリフがないよ?」
「何言ってるんですか。ていうか、知ってたなら先に教えてくださいよ。」
勿論、扉の最後にあんな目にあうことだ。
「事前情報は出しません。じゃあ、今回の説明コーナーだ!」
「…もういいです。」
「今回の最後に出てきたのは機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナ。人が作り出した神だ。」
「ほどんどの神がそうじゃないですか。」
「そうやって宗教を否定するのはやめなさい。このデウス・エクス・マキナ、本来は舞台に登場した。その役割は収集のつかなくなった物語をむりやり終わらせると言うなんとも小説家助けの神様だ。とある魔法少女アニメのラスボスでも機械仕掛けのやつがいるね。もしかしたらこの神を意識している部分もあるかもしれない。」
「実際の長編小説で使われたら読んでくれた人ブチきれそうですね。」
「俺なら怒る。だって、風呂敷を畳めなかったから、神様にしてもらうなんてダメだろ。それはとにかくこの扉でもそんな神様は終わらせる役割をもっている。終わらせるのは世界だけどね。でも、神が出なくてもあの世界は終わっていたよ。それほどまでに地球を疲弊させすぎていたんだね。」
「南極の氷に正体不明のウイルスがあるなんて話は私も聞いたことがあります。」
「それにしても人は昔から人類の滅亡や地球の終わりを想像し続けていた。それは予言という形なのだけど、自分がいつ消えるかなんて考えていてもしょうがないよね。」
「それでもいずれ来るものだから考えてしまうんじゃないですか?」
「まあ、それこそ考えても仕方ない。ところでパニック映画なんかにはゾンビや災害物があるよね?」
「あとは宇宙人とかですかね?」
「うわ、そこには気づいてほしくなかったな。…てもいいけ…かないじゃん。」
「ん?何か言いました?」
「何でもない!ところで、ゾンビ映画のテーマって結局ゾンビより人の方が怖い、じゃん?」
「怖い話でもときどきありますよね。」
「それで災害物だと人は自然に勝てないってのがテーマ!そしてこの地球を作ったのは神!」
「テンションおかしくなってませんか?」
「というわけでゾンビ>人>地球>神っていう力関係だと思うんだ。それが今回の扉にでは面白いくらいに大きくかかわっているよね。」
「もう、そういうことでいいです。」
「投げやりにならないでよ。それでこれもパニック物によくある設定だけどさ。何日後かに地球が滅びますってなる、それでパニックを起こして民衆が暴動なんて話があるじゃないか。でもね、現実になったとするだろ?もしそうなっても人類なら今まで通りに過ごせるんじゃないかなと思うんだ。」
「…それは理想論じゃないですか?」
「確かに一時的には皆正常ではいられないかもしれない。でも、きっと何をしても変わらないのなら、誰かが悲しむ選択じゃなくていつも通りの日常を人類は送れると信じようよ。」
「そうだといいですね。」
「さて、次の扉はそんな感じのお話。」
指差す方を見るとまるで祈りを捧げているように手を重ねる少女がいた。
「いってらっしゃーい。」
そろそろ慣れてきたこの感覚すらも楽しめるようになっていた。
かなり短くなりましたが、無理やり多くするよりかはこっちがいいと思いました。