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街カフェ バージニア  作者: 畑々 端子
24/25

それからと

 彼女が街から居なくなって、2ヶ月。毎日、2往復ほどのメールのやりとりが続いた。


 返信を催促するでもなく、されるでもない。お互いにとって負担にならないやりとり。


 それでも、私の中には小さな虚しさが積もっていた。


 そして、ある日彼女が、


「歳の近い先輩が事あるごとに、しつこくご飯とか遊びにとかに誘って来る」と言うメールが送られて来た。


 いつかに感じた、冷ややかな感情が私の中を満たした。


 私は返事を返さなかった。


 彼女からの連絡もそれきりだった。


 

 未練で続いていた細い糸も等々切れた。切った。


 あっけないものだ。


 だが、茨城は良い意味でも遠かった。中途半端な距離ではなかったから踏ん切りがついた。そういう意味で良かった。


 

 その年の6月。私はバージニアに出掛けた。


 ガレージには自己主張の強い赤色のMINIが止まっていた。そして、彼女の定位置にはスーツ姿の女性の姿があった。


 隣には座るわけにもいかず、私は入口に近い屋根の下の席に腰を落ち着けた。


 梅雨明けを待って、再び出掛けると、また同じMINIが止まっていて、長椅子には彼女と私を思い出させるように、それぞれの定位置に男女が座って、談笑をしていた。


 私はそんな姿を見ながら、はじめて店内のカウンターに座った。


「いつもありがとうございます。最近、彼女さんは?見かけないんだけど」


 と店の主である初老のご婦人が私に声を掛けてくれた。


 私は、私と彼女が近くの大学生であったこと、今年卒業したこと、彼女が地元に帰ってしまったことを話した。ただ、[彼女さん]と言うところは訂正はしなかった。


「そう。遠距離なんて寂しいわね。でも、今はメールとかあるから、そんなに寂しくないわよね」


「はい、そうですね」


「あの子、1人で来ることが多くて、心配で何度か今日は彼氏さんは来るの?って何度か聞いたことがあるのよ、そしたら「あとから来ます」って嬉しそうだったから」とご婦人は懐かしむような眼差しでテラス席を見た後、私の顔を見て微笑んだ。


「ところで、あの2人は新しいお客さんですか?」


「そうね。女の人の方は4月の中頃で男の子の方は6月くらいからだったと思うわ」


「すっかり、定位置をとられてしまいましたよ」


 そうか。と私はなぜか優しい気持ちになると、そう言って笑った。



 バージニアを出て、私は振り返ると、この場所が彼女との最後の場所で良かったと思った。

 もしも、彼女ともう一度話す機会があったなら、あの2人のことを話そうと決めた。 


 きっともう、私がバージニアを訪れることはないと思う。


 あのテラス席にはもう、彼女と私の席はないのだから。


 この場所で1つの物語が終わり、また新しい物語が始まっている。


 なんて素晴らしいことだろう。




 それから、人生と言う道の紆余曲折を経て歩き続け9年の月日が経った。



 相変わらず、彼女とは音信不通のまま。

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