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街カフェ バージニア  作者: 畑々 端子
20/25

野菜と茶碗と箸と

「これ、実家で獲れた野菜なんだけど」


 冬季休暇明け、付属図書館前で彼女に会うと、会うなり、彼女はそう言って、里芋と玉ねぎが入った上品な作りの紙袋をくれた。


「ありがと。またどうして?」


「クリスマスのお礼じゃないけど、なんかしてもらってばっかしだったから」


「そんなの良いのに」


「それから、これは私からの気持ちのプレゼント」


 そう言いながら今度は鞄の中から、ラッピングされた袋を取り出して私に差し出した。


「ありがとう。素直に受け取っておくよ」


 付属図書館の2階。いつもの席に腰を落ち着けてから、包装を開けてみると、中にはデフォルメされたアザラシのキャラクターがプリントされた、お茶碗と箸のセットが入っていた。


「このキャラ可愛いでしょ?私好きなの」


「大切に使わせて頂きます」


 私はその憎めない顔のキャラを見ながらそう言った。


 冬季休暇明け早々と言うこともあって、館内には私達を除いた利用者はおらず、それをいいことに、私達は空白の時間を埋めるように、休暇の間のでき事を話した。


「何がおかしいの?」


 私が口元を緩めていることに彼女が口を尖らせて聞く。


「いや、訛りのイントネーションが濃くなってるなぁって思って」


「うそぉ」


「本当」


 彼女は出会った頃から、語り口こそ標準語や関西弁を真似ていたものの、抑揚は訛りの影響をしっかり残していた。が、地元に帰ってその影響がかなり濃くなっていたのだ。


 そんな訛り口調も彼女のチャーミングポイントではあったのだが。 



 彼女の郷里の方が、何かと伝統の風習が多く、そのため正月ともなれば連日イベントが目白押しであったり、親戚が一同に会したりと、それはそれは忙しかった様子だった。

 特に、料理をする機会が増える為、暮れから三が日にかけては台所に立つ女性が特に忙しいとぼやいていた。


 方やベットタウンでそんな地に根付いた催しがあるでもない私からすれば、彼女の話は新鮮で、羨ましく聞こえた。


「バージニアいつからかな」


「もうやってるんじゃないかな。大体、店って5日から営業だろ?」


「どうだろ。個人経営だからゆっくりかも。私の地元は10日から営業ってとこが多いから」


「田舎だからね」


「またそうやってバカにする。今、茨城県民敵に回したから私も含めて」


「ごめんごめん、冗談」


 地元愛に溢れた彼女が眉間に皺を寄せて言う。私は、とても楽しくなってそう言った。


 その日の帰りの電車の中で、彼女からもらった野菜を覗き込んでいて、紙袋に[Burberry]と書かれてあることに気が付いた。 




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