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メタバース  作者: godlove
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現実の憂鬱

毎日同じ道、同じ電車、同じ会社


〜この道のりは我が人生、、かぁ〜


すこし曇った空を見上げると俺はいっそう淋しくなった

11月の寒気が俺の心に入ってきたみたいだ

いつもの時間の電車に乗り、今日も座れなかった。

電車が揺れるたびに、目の前の女性に触れそうになる

俺は、痴漢に間違われやしないかとヒヤヒヤした。

正直言って少しでも女性に触れたら

俺は間違いなく痴漢に仕立て上げられるだろう

青いヒゲの剃り跡と、太い眉毛にだらしない垂れ目

お世辞にもいい男とはいえない事は自身が良く知っている

だから俺は両手をまっすぐ上げ

女性に向かって自分の潔白を証明するようにアピールした

ただ、少しだけ胸元が気になったのを気づかれたようで


思い切り睨まれてしまった。。。。


俺には春はこない。。。


会社に着き、いつものように給湯室でコーヒーを入れる

ズズッと熱いコーヒーをすすりながら席についた。


20人いる我が営業部は今日も朝から騒がしかった。

俺と俺の部下2人を除いて、みんなバタバタと忙しそうにこの狭い部屋で働いていた。

月末の営業強化週間の為に、保留にしておいた案件をまとめるのに必死なんだろう。


あぁ、もう月末かぁ。。もうすぐ門派大会だなぁ。。


「吉澤さん、おはようございま〜す」

部下の坂下の、気の抜けた朝の挨拶で今日もやる気がなくなってしまった。

おう!坂下おはよう!今日もいいスーツだな!

俺は精一杯の笑顔で答えた。

坂下は中途入社の社員だが、部長か専務の息子という触れ込みで入社してきた。

その坂下が俺の班に入るというから、もしかして俺にも出世のチャンスか?

と、一時は期待をもったがなんのことはない、ただのバカ息子だった。

24歳にもなって、いまだ社会の常識というものをわかっていない。

イタリア製かなにか知らんが、ピタピタのスーツにクッチかコッチかの靴

いつもナヨナヨして気に食わない。

まぁ、それでも俺の一縷の望みには違いないが。。。


「おはようっず!」

でたよ、、こいつは山野。俺のもう一人の部下だ。

体育大学出身で熱血漢といえば聞こえはいいが、ただの筋肉バカ

自分を「自分」とか「オス!」とか言う生き物を始めてみた。

声はバカでかいし気もきかない、それと最後に必ず「ス」をつけるのがうっとうしい。

まぁ、上下関係だけはしっかり守るから俺が言ったことはなんでもする

それに何故かこんなダメな俺の下で働くことを誇りに思ってる変なやつだ

おう、おはよう(今日もうるせーな)


俺達営業部は会社の方針で班ごとに営業に出る、つまり毎日一緒。。

仲良し三人組ってわけだ。

営業職で毎日真面目に仕事してる奴なんかいない(と、思う)

だいたい適当にパチンコ行ったり、喫茶店で商談と称してサボってる

俺達はその典型だった、俺なんか坂下と山野に営業いかせて

自分はネカフェで(英雄オンライン)してた事もある。

しかし、流石に今月は落とせない。

来月はボーナスだし、そろそろ俺も昇進を視野にいれないとリストラされる危険がある

リストラされるとゲームのレアアイテムを買えなくなるし

業者に昼間頼んでいるレベル上げも出来なくなる。

それは困る、とにかく成績を残さないと。


「よ〜し!今日も頑張って営業しようぜ!おまえら!」

「あ〜そうっすね」

「オス!頑張ります!」

大丈夫かよ俺達。。。

未来は暗いぜ。。。


さっきから課長の視線を痛いほど感じるし

とにかく外周りにでも出よう

俺はさっさと書類をまとめて二人を急かし外にでた。

古い営業車に三人乗り込み、出発した。

今日こそは新規の契約を取らないと本当にやばい

しかし、この役に立たない部下二人は、俺の悩みなんてまったくわかってやしない


「吉澤さんって休日何してんすか〜?」


坂下よ、、、それは聞くなよ

独身の38歳の男の休日を聞くなよ!!

お前は俺の休日にそんなに興味があるのか?え?どうなんだ?

お前の休日と違うことだけはハッキリしてるじゃないか!

そんなんだから俺みたいな男の部下なんだよ!


と、言いたかったがこいつは専務か部長の息子だ

そんな事は言える訳が無い

「まぁ適当にパチンコでもしてるよ」

これ以上突っ込まれないようにそっけなく答えると


「自分もパチンコ好きです!今度一緒に行きましょう!」


山野よ、、、行くわけないだろ!バカ!

パチンコなんかした事ないんだよ!

なんでわかんないんだよ!だいたいなんでお前とパチンコ行くんだよ!え?

毎日お前の暑苦しさにウンザリなのに、なんでお前と休日にパチンコなんだよ!

わかれよ!そこの空気は読めよバカ!


とは言わず

「ははは。まぁそのうちな」

とだけ答えて、おいコーヒー飲まないか?サ店行こう

と話しを逸らした。


「あれ?今日は頑張るんじゃないんすか〜?」


坂下。。。コーヒーはいいだろ!!?

コーヒー飲んで頭の回転を早めるんだよ!

打ち合わせもできるじゃないか!バカ!

上司の言うことにイチイチ口出すなよ!


今度は本当に言いかけた、、、危ない危ない。

いつもパソコンの画面に向かって怒鳴ってるから

条件反射で文句言いそうだった、ふぅ〜

「はは、まぁいいじゃないか打ち合わせも兼ねてコーヒー飲もう」

まったく、俺の周りには昔からこんな奴しか集まらない

あぁ、早く帰りたいなぁ、昨日やり忘れてた任務があるんだよなぁ。


「俺、最近ゲームにハマってんすよね〜あ、吉澤さんはゲームとかしないか、あはは」


え??

突然何を言い出すんだ坂下ぁ!

俺はゲームするぞ?そっごいゲーマーだぞ?

だってそれが俺の休日、、いや人生になってるんだから!

ほら、ゲームの名前を言ってみろよ

まさかな、まさか違うよな?


「へぇ〜そうかぁ、昔はゲームやってたぞぉ、なんてゲームなんだ?」


「いや、パソコンのゲームなんですけどね、ちなみにパソコンって言ったのは

吉澤さんにわかりやすいように言っただけで、本当はPCて言うんですけどね」


そんな事は知ってるんだよ坂下ぁ!聞いてないだろ?早く言えよ!!


「へぇ〜そうかぁPCって言うのか。はっはっは俺ももう年だな」

「自分もパソコンって呼びます!!」


どうでもいいんだよ山野ぉぉ!!お前は運転してろよ!喫茶店はいれよ!!


「俺が今一番ハマってんのは(英雄オンライン)ですね。俺のキャラ超強いんですよ」


!!!!

来たか、、俺の時代が来たのか

まったく、、しょうがない奴だ、今まではただのクソ餓鬼かと思って

冷たくしていたが俺が間違っていたようだな、さぁ!なんでも聞けよ!

俺が(晴天)だ!はっはっは!驚くだろうなぁ


「へぇ、英雄オンラインかぁ実はな俺もそ」

「それでぇ、ゲームに超イタイ奴がいてマジ笑えるんすよ!あっはっはー!」


坂下はやっぱり空気が読めないんだな、というか俺の雰囲気の変化を感じろよ

まったく、俺が喋ってるのにわざとかぶせて喋っちゃって


「晴天ってオッサンなんですけどね」



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