消しゴム少年その4
それから、5分後、陸は学校にやって来た。
「ああ、遅れちまったなー」
と、独り言を呟きながら、教室の扉を開けて入ってきた。
「おはよう」
陸は砂井達に挨拶をした。
「あ、陸君。砂井の消しゴム当てが取られたのよ。山田先生に」
「本当か?」
孝明は陸に今まであったことを話した。
「そうか。そんなことが・・」
山田先生が消しゴムを取り上げるのは陸も予想していなかった。
「ごめん、僕が巨大消しゴムのことを教えたばかりに・・」
陸は申し訳なさでいっぱいだ。
「いいのよ。あなたが悪いんじゃないわ」
砂井が言った。
「僕が取り返してくるよ」
陸は、あの怖い山田先生に抗議しにいくのは、いやだったが、今回のことは自分の責任だと思ったので、勇気を持って行くことにした。
陸は職員室に入るなり、山田先生の所へ駆け足で向かった。
「先生、砂井の消しゴムを返してください」
「それは無理な話だな」
「何でですか!?」
「何が『何でですか!?』だ。毎日毎日消しゴム当てばかりしよって。いいか。消しゴムは何のためにあるんだ!?えっ」
陸はしばし考えて、
「文字通り、消すためのものです」
「そうだろ。それなのに、この消しゴムは!」
と、先生は巨大消しゴムを指差した。
「消しゴム当てのためだけに存在している。全く持ってけしからん。それに、陸。お前の成績、このところ下がってきてないか」
陸は言葉を詰まらした。
「去年は全教科平均が4だったのに、今年の1学期の成績は3じゃないか」
「つまり、消しゴム当てのせいだと・・」
この学校の成績は5段階評価で、5が一番よい成績を示す。
「そうだよ。私は担任として、自分のクラスメートの成績が落ちていくのは見ていられないな」
「じゃ、こうしましょう。俺と先生が消しゴム当てをして勝ったら、その消しゴムを返してくれるというのは」
「ああ、いいだろう。ただし、お前が負けたら、1ヶ月間は消しゴム当てはしてはならんぞ」
先生は消しゴム当ての素人。戦っても、おそらく自分が勝つだろうと陸は判断した。
「いいですよ」
「なら、わしはこの大型消しゴムを使わせてもらう。お前は普段使っている消しゴムで戦えよ」
「その消しゴムを使うのはいくら何でも・・」
「勝負するといいだしたのは、お前だ。それに、わしは素人だから、これくらいのハンデがあって当然だ。では、明日の昼休みに勝負だ」