日々は星々の輝きのように
* * *
「最近地震が多いよね」
今さっきもあった揺れの後、そう言ったアリシア。
所変わって、翌日の鉱山の中。
この日の探検を終えてコウヤとアリシアは帰路の途中にあった。
今日は行きにガーディアンを使ったためかなり良いところまで行けて、コウヤも満足である。
「あなたを遺跡で見つけた日から揺れるようになったの」
「俺のせいってかあ?」
「そうじゃないけどさー」
そう言った後、むーと唸って
「なーんか起こりそうなんだよね」
「なんかって、何だよ」
「なんかね、悪い予感」
「そうかい?」
「…ねえ、コウヤはどんな所にいたの?」
足を動かしながら、アリシアがコウヤに質問をする。
「最初に言ったじゃんかよ。こことは違う世界ですーって」
「むー、そうやって人を煙に巻こうとする」
「本当だっての」
「…じゃあじゃあ、こことはどんな風に違うの?」
その質問に、コウヤは自分の元居た世界の情景を思い返し、
「んーと、なにもかもまるで違うんだよ。ほんと異世界」
「ふうん」
そういってしばらく間が空き、
「…えへへ、友達かー」
反芻するようにその言葉を言ってみるアリシア。
…コウヤも優しい表情で見ていた。
「そうだぜ」
「ねえ」
「うん?」
「ありがとっ!」
「おおっ」
言いながら二人は出口までの道を歩いていった。
* * *
その日の夜。猫の足跡亭は、理由はないが大宴会だった。
帰ってきたばかりのアリシアとコウヤも巻き込まれ、これで歌い納めかのように、皆歌って、歌って、歌って…
少年が目を覚ましたとき、壁の時計は朝の四時過ぎを指していた。
大人たちは皆眠りこけているようで、しかしその中にアリシアがいない。
寝ぼけた目を擦りながら広間を見渡してみると、バルコニーへの扉が開いていた。
バルコニーに出ると、手すりを掴み、山の方を見ているアリシアが一人。
…冷えた風が心地良い。
その隣にコウヤも立った。
一緒に山の方を見てみる。
ベルデの朝は早い。
和らいだ闇の中、深い群青色の中に山の稜線が浮かんでいた。
「ねえ」
「うん」
「ーー帰っちゃうの?」
「…うん」
「…そっか」
「…私ね、ちっちゃい頃、スラグ捨て場にいたところを見つけてもらったの。そしてここの皆に育てられて…」
そう言いかけて、
「ーー私は、山から生まれた大地の子! だから、この山が好き! そして、みんなが大好き! レイチェルさんも、貴方のこともっ、みんな、みーんな大好きー!」
心の中を全て吐き出すように、そう山に向かって叫んだアリシア。
「…えへへ」
つられて、コウヤもやってみることにした。
「…俺もお前達が好きだー!」
そう言われ、呆気にとられるアリシア。
「…にひ」
コウヤは笑って見せた。
鉱山の街、ベルデの朝は早い。
ーー夜明け前の空は白ばみ始めている。
「…戻ろっかっ」
「…ああっ」
部屋に入りかける間際、まずは大人たちに毛布を掛ける作業だとコウヤは思った。