このエロエロ悪魔っ!
声をした方を見上げてみると、ぐるぐると渦巻いた空に一人の女の子が浮かんでいたの。
パッと見た感じだと、私達と年は変わらないみたいだけど……胸に革のベルトのようなものを巻いていて、妙な鍵穴が付いたぱんつをはいただけの裸同然のえ、え、えっちな格好!!!
「あっ、あ、あ、あんた誰よ!と、というか、そのえっちなかっこは何なのよ~」
「まぁ、もしかしてコスプレですかっ!?
凄くステキですっ 」
隣で愛美は目をキラキラさせながら、えっちなかっこの女の子を見つめる。
愛美ってば、こんな街中であんなえっちなコスプレをするわけがないじゃない。
それに背中に付いた黒い羽……あれって、もしかして!
「クフフフ~、おばかな二人だよ~。リリスはリリスって言うんだけど、えっちな悪魔なんだぁ」
"リリス"と名乗った女の子はニヤリと笑うと、鋭い牙が光るのが見えた。
やっぱりあの女の子は悪魔だったんだ!
私のイヤな予感は当たったみたい。
もしかしてこんなにも学校が静かで人がいないのも、この子の仕業なのっ!?
「学校をこんな風にしたのも、あんたのせいなの!?」
本当は突然悪魔が現れて驚いたけど、ここで怖がってひるんじゃダメ!
私がリリスを睨み付けると、リリスはニヤリと楽しそうに笑ったまま、空から降りてきて私達の目の前に立った。
「クフフッ、うん、そうだよ~。リリスがね、ぜぇんぶしたの。
だって、だって~、おばかなにんげんは朝から"学校に行きたくないよ~"とか、勉強やだーってワガママ言ったりしてたの~。
だからリリスはそんなおばかさん達のために、ちょっ~とお手伝いしただけ」
「じゃあ他の子達をどこへやったんですか!?
かっ、返してくださいっ」
愛美も足をがくがくと震わせながらも、私に負けじとリリスに詰め寄る。
リリスはそんな私達がおかしいのか、ケラケラと笑った後に突然うっとりと目を細めて、自分の唇をぺろりと舐めた。
「おばかなにんげん達の真っ黒なエネルギーはリリスがおいしーく食べちゃったのぉ…。
だから~今頃皆、死んじゃったみたいにも抜けの殻だと思うよ~。
あ、でもぉ、このままだと本当に死んじゃうかも~クフフ~。それに今リリス、たっくさんのエネルギーを吸収して~身体中が熱いのぉ~……あぁんっ」
な、な、何なのよ~、このエロエロ悪魔!
それにぐれっちょんも、エネルギーを吸収されたままだと、いずれ死んじゃうって言ってた……。
どうしよう……このままじゃ、皆死んじゃう!
昨日ぐれっちょんから貰った髪飾りはちゃんと髪に付けてあるけど、まだ変身の仕方なんて分からないよ!
私と愛美が途方に暮れていると、遠くから白い物体が上下にふよふよと浮かんで、こっちに向かってくるのが見えた。
あれはもしかしてぐれっちょん!?
「お~い、美月~愛美~」
やっぱりぐれっちょんだ!
でも何だか重たそうに身体を上下させて、ゆっくりこっちに向かってくる。
それに何だかお腹が膨らんでいるような……。
「お~、わりぃ、わりぃ……ちょっと朝飯食い過ぎて、遅くなっちまった」
もうすでに汗だくになっているぐれっちょんは満足そうに、お腹をポンポンと叩く。
それに口のまわりにはソースやマヨネーズの染みが、いっぱい付いてるじゃないっ。
「人の家のご飯を勝手に食べるとか失礼でしょっ?!」
「仕方ねーだろうが!腹は減ったのに家には誰もいねーし。
勝手に食うしかなかったんだよ!」
「あんた、ぬいぐるみでしょっ!何でそんなにご飯食べるのよぉっ」
「昨日天使だって、飯も食うし糞もするって言っただろうが!」
ふぬぬぬぬぅー。私とぐれっちょんはバチバチと火花を散らせながら睨み合う。
しかも隣で愛美が楽しそうに「仲良しさんですね」なんて言いながら笑ってる。
私とぐれっちょんが仲良しなんて、絶対にないんだからっ!
すると突然私とぐれっちょんの間に凄い音を立てて大きな雷が落ちてきたの。
大きな音と衝撃に私は身体が震えちゃって、目をぎゅっとつむってその場に固まっちゃったんだ。
うー、だってだって、雷怖いんだもん~。もうおばけの次くらいに苦手……。
「みっちゃんっ!」
愛美も雷の音に驚いたみたいで、私にぎゅっとしがみついてきたの。
だけどそれ以上音がしなくなったから、私はゆっくりと目を開けたんだ……するとそこには凄く怖い顔をして睨み合うぐれっちょんと、リリスの姿が……。
「リリスのことを忘れて、二人でずっとおはなししてるなんて~、リリス怒っちゃうんだから~……」
「おい、美月、愛美……変身だ」