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戻っていく彼の背中を見て遥に声をかける。
「知り合いなの?」
「知り合いというか・・・」
「従弟?」
「分かりやすくいえば私の下僕」
「は?」
下僕って言い換えると奴隷とかそういう意味だよな。
「人権は無視してはいけないと思うよ」
「例えだと分かってくれてないのね。
あんまり嫌なんだけど、言わないといろんな誤解が産むことになるから先に説明するわ。
遠藤家と山内家は昔から主従関係で成り立っているのよ。
一応法律上人権は無視できないから遠藤家の人が自分の意思で私たちの誰かに仕えるというシステムになったのだけど」
「じゃあ、刹那君は遥に仕えるんだね?」
「みたいね。去年本人から言われたから。
でも高校卒業か大学卒業から。まぁ学生は学業に専念しろっていう話だけど。
その間は別々で暮らすことになっているのよ。
互いのプライベートを充実させるために」
「えっと・・・もしかして一緒にいる間は子供のときから個人に仕えるとか関係なく主従関係が働いてるの?」
「その通り。まぁ子供の頃は遊び相手って言う感じなんだけど」
戸惑った様子で彼の背中を見ていた。
確かに遥の話だと有り得ないんだ。
どうしてだろう?
もしかして遥が連れ去られたことと関係あるんだろうか?
えっと・・・人気ですね。刹那君。
昼休み女子の大群が周りに集まっている。
それを観賞しながら弁当を食う俺たち一同。
「何あれ」
「転校生」
「こんな時期に?」
「みたい」
「珍しいな」
「うん」
「で、嫌そうに女子の大群の中にまぎれている氷姫は何?」
「知り合いなのだとか」
「ご愁傷様」
ちらりとみてそのままご飯を食べる俺らは遥から見たら裏切り者なんだろうな。
いつもは誰かが助け舟を出しているから。
実際助けろっていう視線をちらちらとこっちを見て送っている。
ごめん、この女子の大群は俺たちには無理だ。
自分から離れてくれたら隔離できるけど。
それから一日中刹那君は遥につきっきりだった。
そして遠くからでも仲がいいんだなぁって思えるほど遥の態度が違った。