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死亡フラグ回避に飽きたので、悪役令嬢らしく悪の組織をプロデュースすることにしました  作者: 高橋 淳


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黄金の雨と共犯者の影

「ハハ……ハハハ! 見てくださいボス! 金貨が……金貨が山のように積まれていきますよ!」


カインが目の下のクマを激しく揺らし、狂ったように算盤を弾いていた。机の上には、工場の廃水を綺麗にするために特別精製した浄化薬によってもたらされた莫大な利益が築かれている。


「裏ルートに流した薬が、汚染に悩む豪商たちの間で『聖女の奇跡より効く』と噂になり……! 希釈したシミ抜き剤を作っていた頃には考えられない額です。新品の蒸留器どころか、研究所を丸ごと買い取れますよ!」

「僕もまた新しい杖買っちゃった…この最高級の魔晶石……魔力が溢れて止まらない!」


ゼノが新調した杖の輝きにうっとりとする傍らで、リノは高級な肉料理を頬張り、アルベルトは信じられないものを見る目で金貨の袋を眺めていた。


「……ボス、あんたは本当に何者なんだ? たった数日で、俺たちの借金を全部返した上に、一生遊んで暮らせるほどの資金を稼ぎ出しちまうなんて」

「ふふ、副収入に浮かれるのはそこまでにしてちょうだい。これはあくまで、次の『投資』のための軍資金に過ぎないわ」


セレスティーヌは黄金の山を前にしても眉一つ動かさず、優雅に紅茶を啜る。しかし、彼女の視線はすでに、その金すら霞むほどの巨大な「獲物」を捉えていた。彼女は手元の「補助金横領の帳簿」と、王宮の公式報告書を交互に見比べ、冷ややかな声を出す。


「……おかしいわね。王太子がこれだけの補助金を横領していながら、なぜ公式な報告書には、びた一文の不整合も出ていないのかしら?」


セレスティーヌの鋭い直感が、決定的な違和感を捉えた。これほどの巨額を隠し通すには、組織的な加担がなければ説明がつかない。


「アルベルト。王立銀行の頭取——あの男、最近やけに羽振りがいいと聞くけれど。私の予想が正しければ、彼は『王家の財布』の番人以上のことをしているはずよ」


ボスの言葉に、アルベルトの表情が引き締まった。彼は懐から、潜入調査で密かに入手していた「不自然な金の流れ」を記したメモを取り出す。


「実は私も、王立銀行が王太子や王妃の個人的な借金を不自然に処理している件を追っていました。…銀行側は、横領された汚い金を特定の口座で預かり、それを架空企業の『正当な利益』として書き換えて、王家へ綺麗な金として戻している。王立銀行そのものが、王家の巨大な洗浄機関として機能しているに違いありません」


アルベルトの報告に、セレスティーヌの口角が冷酷に吊り上がった。


「なるほど。銀行が共犯者として『綺麗な金』に仕立て直しているから、公的な監査をすり抜けているわけね。……でも、銀行の中には必ずあるはずよ。その汚い金がどこから来て、どこへ流れたのかを記した『真実の入出金記録』が」


セレスティーヌは、最高級の魔晶石をあしらった扇で、机を鋭く叩いた。


「いい? 私たちがやるのは、その銀行の奥底に眠る『裏帳簿』を奪うことよ。王太子たちが『証拠は消えた』と高を括っている間に、銀行の心臓部を握りつぶす。……彼らが私の謝罪を求めて吠えているその口に、決定的な証拠を突っ込んであげるの」

「了解です、ボス! 」


カインが歓喜に震え、アルベルトが鋭い眼差しでボスの前に膝をつく。


「作戦開始よ。アルベルトは銀行幹部と王家の裏取引の場所を特定。リノ、あなたは今夜、銀行の地下深くにある機密書庫へ潜って、裏の記録を盗み出しなさい。ゼノ、書庫に施された封印術式の解析と解呪の準備を」

「「御意、ボス!!」」


セレスティーヌは窓の外、王宮の隣にそびえる王立銀行を見据え、優雅に扇を広げた。


「『娘に謝らせろ』って言っているんですって? ……ええ、いいわよ。謝罪の代わりに、あなたたちの『汚れ仕事を一手に引き受ける財布』を、私の支配下に置いて差し上げますわ、殿下」

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