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死亡フラグ回避に飽きたので、悪役令嬢らしく悪の組織をプロデュースすることにしました  作者: 高橋 淳


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お掃除の結果

「——な、何ですって!? 川が完全に浄化されたというの!?」


王宮の奥。王妃は届けられた報告書を震える手で投げ捨てた。隣に座る王太子エドワードは、額に脂汗を浮かべ、情けなく口を震わせている。


「そんなはずはない! あの装置は……あんなハリボテが稼働するはずがないんだ! 私は財務卿に『装置はフル稼動させているが、技術の限界で浄化しきれない。さらなる補助金が必要だ』と昨日も報告したばかりなのに!」

「落ち着きなさい、エドワード! ……あの工場は爆発で跡形もなく消えたのでしょう? 証拠はないはずよ」

「母上、それが最悪なんです。爆発ですべてが吹っ飛んだせいで、『フル稼動させていたはずの機械』の残骸すら残っていない。それなのに、川だけは一晩で真っさらに浄化されてしまった。これでは……」


エドワードは拳を机に叩きつけた。


「これではこれまで注ぎ込んできた補助金が浄化には一銭も使われていなかったことが民衆の目にも明らかになってしまう! 『動かしていた機械』が嘘だとバレるどころか、その予算がどこへ消えたのか、叔父上や公爵たちに詰められたらおしまいです!」


浄化不可能だと言い張ってきた「嘘の防壁」が、皮肉にも「完璧な浄化」によって粉砕されたのだ。


昨夜の「お掃除」を終えたセレスティーヌは、何事もなかったかのようにテラスで朝食を摂っていた。

そこへ、夜通し現場の指揮を執っていたアルフォンスが、軍靴の音を抑えながら戻ってきた。


「……おはよう、セレスティーヌ」


アルフォンスは彼女の隣に立つと、無言のまま、慈しむようにその銀髪に触れた。その手は、妹の苛烈な手腕を察しながらも、それをすべて包み込もうとするかのように温かかった。


「おはようございます、お兄様。お疲れのようですけれど、お仕事は一段落しましたの?」

「……ああ。跡形もなかったよ。フル稼働していたはずの最新装置も、それを裏付ける証拠も。ただ、あんなに汚れていたのが嘘のように不思議なほど清らかな水だけが川を流れていた」


アルフォンスは妹の視線を真っ向から受け止め、小さく息をついた。


「今頃、王宮は蜂の巣をつついたような騒ぎだ。お父様が補助金の使途について、逃げ場のない追及を始めている。……後のことは我々に任せて、お前はここでゆっくりしていなさい」


セレスティーヌが柔らかな微笑みを返すと、足元で衣擦れがした。

ララとテオが、彼女の左右から静かに寄り添い、そのドレスの裾をそっと掴んだ。


「お姉様、おはよう。……あのね、この刺繍の続き、教えてほしいな」

「僕も。お姉様が淹れてくれるお茶が飲みたいんだ。お隣、いいでしょ?」


二人は外の騒ぎなど眼中にない。ただ、大好きな姉の関心を引こうと少し背伸びをした仕草で彼女を見上げる。セレスティーヌは膝の上に置いた帳簿の重みを感じながら愛おしげに二人の頬を撫でた。


「ええ、いいわよ。お茶の準備をしましょうね」


清々しいほどに澄み渡った空気の中、セレスティーヌは穏やかに目を細めた。

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