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死亡フラグ回避に飽きたので、悪役令嬢らしく悪の組織をプロデュースすることにしました  作者: 高橋 淳


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セレスティーヌ、二度目の夜遊び

「……カジノではお兄様に邪魔をされてしまったけれど。次は、もう少し『ナイトメア』らしい仕事をしましょうか」


アジトの豪華なソファに深く腰掛け、セレスティーヌはさらりと美しい銀髪を指先で弄んだ。彼女の瞳には、水晶に映し出された王都の一角、重苦しい煙を吐き出す巨大な工場が映っている。


「ボス、例の王立魔導染色工場の調査資料です」


アルベルトが恭しく一礼し、分厚い書類をテーブルに置いた。


「表向きは伯爵家の所有ですが、実態は王太子殿下と、その取り巻きたちが利権を貪る『打ち出の小槌』。そして、その代償として平民街を流れる川には、致死性の魔導廃液が垂れ流されています」

「……ええ、知っているわ。下流の子供たちが原因不明の皮膚病に苦しんでいるというのに、お兄様たちがいくら法整備を訴えても、王妃様と殿下が『伝統的なドレスの色を守るためだ』なんて言って、すべて握りつぶしているんですものね」


セレスティーヌの唇が、冷酷な弧を描いた。


「カイン、準備はできて?」

「はい、ボス。既に昨夜、排水口から直接サンプルを回収しました」


白衣を纏ったカインが、不気味に発光する紫色の試験管を掲げる。


「これはひどい。魔石の加工に使用される劇薬が、中和もされずにそのまま流されています。これを浄化するには、通常の魔法では数十年かかるでしょう。……ですが、俺の特製中和剤なら、工場の設備ごと『掃除』することが可能です」

「頼もしいわね。リノ、工場の構造は?」

「ばっちりだよ、ボス! 地下にある秘密の金庫室、そこが汚職の証拠――二重帳簿の隠し場所だね。ゼノが影魔法を使って内部の巡回ルートを特定してくれたから、ネズミ一匹にも出会わずに入り込めるよ!」


リノが爆薬をいじりながら、楽しげに報告する。


「いいわ。汚職の証拠をすべて奪い、その上で、あの醜い工場を『浄化の炎』で焼き尽くす。……お兄様たちが法で裁けないのなら、悪党が力ずくで消し去ってあげるのが道理でしょう?」


セレスティーヌは、水晶の中で不気味に煙を吐く工場を冷ややかに見据えた。


「アルベルト。今夜、お兄様たちが演習で王都を離れるタイミングを狙いなさい。……お掃除の時間は、短いほうがいいもの」

「御意、ボス。ナイトメアの名において、完璧な『悪夢』を見せて差し上げましょう」


その夜、月明かりも届かない工場の裏手で、影たちが動き出した。

ゼノの魔法で意識を刈り取られた衛兵たちが、静かに崩れ落ちる。セレスティーヌは、カインが差し出す防護の魔導具を手に、優雅に、だが確実に「悪徳の城」へと足を踏み入れた。


「さあ、まずはこのドブ川の中に隠された、殿下たちの『お小遣い帳』を拝見しましょうか」


彼女の美しい髪が、工場の魔導灯の光を反射して怪しく輝く。それは、これから始まる破滅の序曲だった。

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