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スマフォのアラームで目が覚める。私はトイレに行くために階段を降りる、でもトイレは使用中で、私は手持ち無沙汰になって洗面台に向かった。
「?…!?っ」
そこで私の頭に咲く菊の花が1つ、真っ赤に咲いていた。愛する人と番になれる特別な花…私は慌てて洗面台から鋏を取り出し、慎重に茎を切る。
掌にコロリと転がった時は、ふわりと甘い香りが漂った気がした。
私は茎を水で濡らしてから自分の部屋に戻る。そして清潔なハンカチで包むように縛り、今日遊園地に向かう鞄に入れた。
「(こ、これを剛くんに食べさせたら、私と剛くんは番になれる…剛くん、食べてくれるかな?)」
「流李ー?今日は剛くんとお出かけするんでしょー?起きてるの〜?」
「お、起きてるよー!」
1階からお母さんの声が聞こえてきて心臓が跳ね上がる、私は再度赤い花を入れたハンカチを見てから、1階のリビングに向かった。
☓☓☓
「おはよう、流李」
「おはよう剛くん!」
俺達は10時に家の前で待ち合わせをしていた。混雑を避けて交通機関を利用するためだ。
今日の流李は頭にピンクの花を咲かせて、可愛い私服を着ていて新鮮に見える。デートの日はピンクの花を切らない事にしているから、特別感があって嬉しい。
「いこうか!剛くん!」
「ああ、行くか」
今日は流李は香水でも着けてるのか、でも自然で好きな甘い香りにホッとする。
「お父さんお母さん、いってきまーす!」
「おじさんおばさん、夕方には帰ります」
「「いってらっしゃーい」」
力哉はもう遊びに行ってるのか返事はなく、おじさんとおばさんの返事を受けて俺達は遊園地に向けて歩き出した。
遊園地に着いたのは11時少し前。思ったより空いていて、すぐにチケットを買えた。
「わぁー!すごいすごい!あれジェットコースターだよね!?」
「ああ、乗るか?」
「うん!でも…ちょっと怖いかも」
「俺が隣にいるから大丈夫だ」
流李は俺の手をぎゅっと握って、ピョンピョン跳ねながら行列に並ぶ。頭には今日もピンクの菊が三輪、風に揺れるたびに甘い匂いがふわっと漂ってきて、俺は内心で「落ち着け落ち着け」と自分に言い聞かせていた。
最初に乗ったのは絶叫マシン。発車してすぐ急上昇、急降下、ループ。
流李の「きゃあああああ!!」って悲鳴が可愛すぎて、俺は思わず笑いながら「うおおおおお!!」と一緒に叫んだ。
頂点で一瞬止まったとき、流李が俺の腕にしがみついてきた。
「もうダメぇ〜! 心臓出ちゃう〜!」
「まだ半分も行ってねぇぞ」
降りたあと、足がガクガクで立てない流李を肩で支えながら出口へ。
「もう二度と乗らない…」って言ってるくせに、目がキラキラしてる。
次はお化け屋敷。流李は「怖いの苦手だけど、剛くんがいるなら…!」と強がって入場。
案の定、最初のゾンビで「ひぃぃぃ!!」と俺の背中に隠れて、ずっと「もう出たい出たい」と泣きそうな声。
最後まで俺の腕にしがみついたまま出てきて、涙目で「もう絶対入らない…」って言ってたのに、「…でも、ちょっと楽しかったかも」って照れ笑い。
可愛すぎて頭を撫でまくった。お昼はフードコートでクレープ。
流李は生クリームとイチゴが山盛りのやつを頼んで、食べながら頬にクリームつけてる「ほら、ついてる」って拭いてやると、顔を真っ赤にして「自分で拭けるもん……」って小声で言う。
午後はメリーゴーランドとコーヒーカップ。コーヒーカップは流李が「もっと回して〜!」ってハンドルをぐるぐる回す。
俺も負けじと回したら、降りたときに二人してフラフラになった。
「もう目が回る〜」って流李が俺の腕にぶら下がってきて、自然と肩を抱く形に。そのあと、射的で特大のクマのぬいぐるみをゲット。
流李が「欲しい!」って言ったやつを三発連続で当ててやったら、「すごい! 剛くんかっこよすぎ!」って抱きついてきて、周りのカップルに「いいな〜」って囁かれてた。
夕方近く、ちょっと疲れてきたからベンチで休憩。
流李が俺の肩に頭を乗せてきた。
「…今日、すっごく楽しい」
「俺もだ」
「剛くんがいてくれるから、全部が特別なんだ」
そう言って、ぎゅっと手を握ってくる。俺はそっと流李の頭に咲くピンクの花に触れて、小さく呟いた。
「…まだ、今日は終わらないからな」
流李は意味に気づいてないみたいだった。
「うん! 観覧車も乗りたいし、帰りにお土産も見たいし!」
そう言ってって無邪気に笑ってる。夕暮れの遊園地がオレンジ色に染まり始める頃、俺たちは最後に残した観覧車に向かって歩き出した。
「(ここからが、本当の「今日のメインイベント」だ)」




