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総合格闘トーナメント、それは種族別に分類されている。理由は単純で人間と半神と鬼人は筋肉量が違うからだ。勿論それだけでなく半神と鬼人は魔法や超能力といった特殊な能力を使う為、戦いは白熱し人間達に比べて半神、鬼人の格闘家マニアではチケットの競争率が上がり、高額販売される。
そして優勝賞金も破格である…だが、俺は金が目当てでトーナメントを勝ち抜いてきた訳じゃない。俺には愛する流李を守る為、そして彼女に愛を伝える為に、何としても優勝しなければならないのだ。
『遂にトーナメントは決勝戦!対戦相手は雷の能力を持つ鬼人!雷光!相手は無能力だけど鍛え抜かれた肉体で勝ち抜いてきた鬼人!剛!』
アナウンサーの声が会場に響くと共に、観客が沸き立つ。相手は180の筋肉質な男で俺より一回り小さい、だが雷の能力を武器にトーナメントを勝ち抜いてきた強者だ。俺はこの試合、負ける訳にはいかない。
『互いに見合って見合ってレディー…ファイ!』
ゴングの音が鳴ると共に俺は駆け出す。能力者相手に持久戦に持ち込むと、こちらの体力が削れるのは目に見えている。短期決戦が鍵となる。
だが俺の試合を見てきた相手はそれを看破している様で、両手に電気を放ち牽制する。俺はそれに怯む事無く、ボディーに重い拳を撃ち込んだ。
「うっ!」
「ぐっ!」
だが肉を切って骨を断つ。相手は鋭い一撃を受ける覚悟で接近を許し、放った拳に電気を放出させる。
痛みと痺れが拳に入る。しかし俺はそれに臆さず一歩踏み込み、もう片方の手で相手の顎にアッパーを入れる。
「がっ!ばけもんか…っ!」
まさか俺がそのまま拳を振るうと思わなかったのか、顎に重たい一撃が入り意識を朦朧とさせる。俺は勝機を見落とさず馬乗りになりバウンドの嵐を浴びせる。
「ぐっがっ!」
「うっぐぅ!」
だが相手もやられるだけでなく、俺の脇腹を掴むと電気を浴びせてきて、一瞬身体を麻痺させているとブリッジをして、馬乗り状態から逃れる。
「くそぅ…まだまだぁ!」
だが今の一撃で電力を使い果たしたのだろう。奴の拳の電気はパリパリ音を立てている程度のもので、奴の放ったエルボーを難なく受け止めると、渾身の力を籠めて奴の顔面に一撃を喰らわせる。
「ぐはぁっ!」
相手は鼻血を吹いて倒れ、レフェリーがカウントを取る。
「ワン!ツー!スリー!フォー!ーーーテンッ!!この勝負!剛の勝ちぃ!」
レフェリーが俺の腕を掲げると歓声が一気に沸き立つ。俺は遂にやりきったんだと両手を上げて雄叫びを上げた。
『流石剛!無能力で能力者を伸していくその勇姿!伊達ではない!!インタビューを貰えないでしょうか!』
昂る熱を発散し切れないままだが、リングを降りて自分の待合室に戻ろうとしたら、アナウンサーがマイクを持って近付いてきた。俺はそれに一言だけ残すと、その場を後にした。
『愛する者の為に勝ちました』
☓☓☓
その後、閉会式や打ち上げを夢見心地で参加し、俺はチーフや先輩達に礼をしてから早めに飲み会を切り上げさせて貰う。
そして早足で帰路に着きその足で自分の家じゃなくて、隣の流李の家に向かいチャイムを鳴らす。
少ししてから流李が私服姿で降りてきた。可愛い。
「剛くん!試合どうだった?」
「ああ、勝ったよ!」
「やったぁ!!凄いよ剛くん!」
「へへ…なぁ流李、明日遊園地に行くのは勿論だが…優勝したご褒美が欲しい、良いか?」
「えっう、うん!今家族いないけど、念の為に私の部屋で…」
それを聞いて俺は流李を抱き上げて、玄関で靴を脱いで2階の部屋に向かう。そして女の子らしい可愛い部屋の窓際のベッドに流李を降ろして、ゆっくりと口付ける。
「ん…っちゅ、はっ」
「ちゅる…ちゅっちゅっ」
流李とキスをする様になったのは流李が中学生になった時に、恋人らしい事がしたいと言い出した流李と、皆に内緒でキスをする様になった。
最初はほんのり甘い程度だった。だが回数を重ねる毎に流李の唾液は甘味を増して、今では蜂蜜の様に甘い甘露と化していた。
俺達半神や鬼人が力を蓄えると食人衝動が起こる、その衝動を抑えられるのは花人の蜜だけーーー俺は、流李が居なかったら今頃化け物になっていたと思っている。
流李を守りたい、愛したい、この甘味を味わいたい。
その欲望が鬼神としての本能を押し潰しているから、鬼“人”でいられている。
「剛く…んっちゅく…ぷはっ」
「は…流李…ちゅっ」
だがこの甘露は余りに依存性が高いから、今日みたいに特別な事があった時だけ、キスするって約束して自重している。
流李の唇から自分の唇を離すと銀の糸が繋がっている。俺はそれを舐め取ってから、潤んだ流李の瞼にキスを落とす。
「はっ…美味しかった?」
「ああ…世界一甘ぇ蜜だ」
「良かった」
本当はもっと深く繋がりたいけど、流李が女子高生だと自分に言い聞かせて乱れた服を直す。
「…流李、俺流李が高校卒業したら家を出るよ」
「え?」
「その時一緒に暮らしてぇんたけど…良いか?」
「!、うん!剛くんと暮らす!」
そう言って流李は俺の胴回りに抱き着いてくる。親元を離れて暮らすのは流李とエッチな事したいっていう、下心あっての事なんだが多分流李は気付いて無いだろう。
純粋無垢な流李を騙しているみたいで少し良心が傷んだ。それを誤魔化す様に俺は流李の乱れた衣類を正してやった。




