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私の恋の証を、その大きな口で食べられる度に、私の鼓動は脈打つ。
私、花人である百川流李の朝の日課は、髪飾りの様に咲く菊の花達の中で、ピンクの花が咲いてないか洗面台でチェックする事だ。
「今日は咲いてないや」
洗面台で自分の癖っ毛を確認してもどれも白や黄色ばかりで、ピンクの菊は咲いてなかった。その事にがっかりしながら私は毛先を整えてる。
「おーい流李、来たぞ〜」
「!、はーい」
玄関の方で私の幼馴染の剛くんが、声を掛けてくる。私は鞄を持って玄関へと急いだ。剛くんは鬼人で2メートルある大きな身体が、頭と白くて立派な2本の角がドアの縁にぶつからない様に、少し窮屈そうに屈んでいた。
「剛くんおまたせ!」
「!、流李、後頭部にピンクの花咲いてる」
「え!」
私が靴を履いていると後ろから剛くんが、後頭部にある菊の花を持ち、玄関の工具入れに常備してある鋏を取り出して丁寧に菊の花を切る。
そして犬歯が尖った鋭い歯が並ぶ、大きな口の中にピンク色の菊の花を放り込むと、咀嚼して飲み込んだ。
私はこの光景を見るのが大好きだ。
「美味しかった?」
「ああ、美味い」
「良かった」
剛くんが鋏を戻している間に、私は靴を履き終える。そして私はリビングに向かって大きく声を上げた。
「お父さんお母さん、力哉!いってきまーす」
「おじさんおばさん、力哉、いってくるなー」
「「「いってらっしゃーい」」」
3人の送り出す言葉を背に受けて、私は剛くんと手を繋いで通学路を歩き出した。
私と国分寺剛は、人口の3割の内の、花人と鬼人という種族だ。
剛くんは5歳年上の成人した鬼人で、今は総合格闘家としてリングの上で試合をしたり、ジムに通って身体を鍛えている。
何で成人している剛くんが私と一緒に、通学路を歩いているのかと言うと、希少価値がある花人であり、剛くんの恋人である私を護衛する為に登下校をしてくれているからだ。
「剛くん、次の土曜のトーナメント勝てそう?」
「ああ、優勝してやる」
「凄いね!」
「流李は学校どうだ?」
「勉強はあんまり、でも家庭科はこの前料理先生に褒められたんだ」
「そうか、良かったな」
「うん!」
私は他愛のない会話をしながら歩く、この時間が好きだ。四季折々の中で変わらずゴツゴツした手で、私の手を優しく握る剛くんの手が大好きだ。
「それでな、流李…もし優勝したら賞金出るから、日曜日は遊園地に行ってくれるか?」
「うん!もちろん行く!」
「そうか、ならより一層頑張らねぇとな」
そう言ってはにかんで笑う剛くんが何だか可愛く思えて、私はギュッと剛くんの手を握り締めた。
楽しい時間はあっという間で、剛くんと他愛のない話をしていると、私の通う八百万高校が見えてきた。
「それじゃあまた帰りに迎えに来るな」
「うん!楽しみに待ってる」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
正門で剛くんと別れて私は下駄箱に向かう。そして上履きに履き替えて私は自分のクラスに向かった。
「おはよう!」
「おはよー流李ちゃん!」
「おはよう流李!」
百合ちゃんと千里ちゃんだ。彼女達とは小学校からの仲で、彼女達の頭には百合ちゃんには百合の花が、千里ちゃんの頭にはガーベラスが咲いている。
「今日も国分寺さんと登校してきたの?」
「うん!」
「いいなー、私も幼馴染の鬼人とラブラブな登校してみたかったわ〜」
「千里ったら…」
「千里ちゃん可愛いからすぐ彼氏出来るよ!」
「あら嬉しい事言ってくれるわね、昼休みに好きなジュース奢ってあげる」
「ほんと?ありがとー!」
「流李は嫌味なく言ってくるし喜んでくれるから、こっちまで明るくなるわ」
「そうね」
2人と話しているとチャイムが鳴って先生が入ってきた。
「ほら出席取るわよー、席に着きなさーい」
「はーい!」
私は急いで自分の席に向かい鞄を机に引っ掛ける。早く下校時間になって剛くんに会いたいなぁと思った。




