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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『真実の愛』の前に敗れた。

1度目の人生

 私の婚約者カルヴィンは、才色兼備の男性だった。

 地位、名誉、才能そのどれをとっても最高の男性であった彼は、女性なら誰しもがその妻の座を欲しがった。

 そんな中、彼の婚約者の座を手に入れたのは私だった。彼に一眼見た時に恋に落ち、努力に努力を重ね、彼には劣るものの膨大な知識を頭に詰め込み、起業して成功した末に勝ち取った政略結婚。

 私たちの間には愛などない。そんなことわかっている。しかし、私はそれでも幸せだった。

 ある時から、彼の挙動がおかしいことに気がついた。初めは気のせいかと思っていたものの、どうにもそれが私の気のせいじゃないことが判明していった。

 カルヴィンはどうやら、夜な夜な街に繰り出し、一人の女性と逢瀬を重ねているようだった。

 しかし、私はそれでも良かったのだ。どうせ、結婚するのは私だ。そうすれば、彼の座は私のもの。一端の女性など取るに足らないのだ。

 そうして月日は一年ほど流れた、とある盛大なパーティーの数日前、私は焦っていた。

 殿下からのパートナーの申し込みの手紙が来ないのだ。待てど暮らせどこない手紙。私は一人涙した。

 そうして、パーティーの当日。やはり、彼からの申し込み状は届かなかった。私は父の制止を振り切り、一人パーティ会場へ向かった。

 皆が私を見ている。当たり前だ。パートナー同伴のパーティーに、しかも殿下の婚約者である私が一人で来場したのだから。

 人の視線に耐えること数十分。ラッパが城内に鳴り響き、殿下が入場した。その隣ーー私がいるべき居場所にはあの平民女性が収まっていた。


「私はこの女性と結婚する!」


 そう高らかに宣言する彼。頬を赤らめ、恥ずかしそうにしている女。

 そんな二人を祝福する人々。私はそれに耐えられず、場内から飛び出した。

 私はこれからどうなるんだろう。父にも勘当されてしまうかもしれない、そんなことはどうでもよかった。私が考えていたことは、なぜ彼に捨てられたのか、どうすれば彼に愛されたのか。それだけだった。

 幸せそうに笑い合う二人を思い出すと、ボロボロと涙が溢れてきた。幸せなそうに笑い合う二人が自分の惨めさを引き立てているようで、悔しかった。

 ーーあの人がいなければこのまま生きていても仕方がないわ。

 私は二人の愛もこれからの人生も受け入れられずに、城の近くにあった池に飛び込んだ。


2度目の人生

 私は子供の姿に戻っていた。どうやら人生をやり直すことになったらしい。神様が不憫な私にチャンスをくれたのだと歓喜した。

 しかし、そんな喜びも長くは続かなかった。

 彼と親密な関係になるように、前回よりも努力した。しかし、やはり彼が選んだのは彼女だった。

 私はまた人生をやり直すことにした。


3度目の人生

 また過去に戻ってきた私は考えた。

 私には何が足りないのか。あの女のどこがあの陛下を虜にしているのか。

 そうして、気は進まなかったが、あの平民女性を真似ることにした。殿下から愛されるのであれば、自分を押し殺すことだと厭わなかった。

 あの女の行動や口調、仕草を徹底的に真似ることにした。殿下を誰よりも知っているのは私だ。

 ーー殿下、殿下、殿下! 誰よりもあなたを知っているのは私です!


「気持ち悪い」


 私に待っていたのは祝福ではなくその言葉のみだった。


4回目の人生、5度目の人生、××度目の人生

 私はどうすれば殿下に愛されるのかを考えに考えた。あるときは黒魔法を使い、あるときは自分の性格や殿下との出会い方を変えてみた。時には、陛下を庇って重症をおい、『命の恩人』の座を手に入れた。しかし、私の恋は実を結ぶことはなかった。

 口調も、性格もしぐさも、何もかも変えた。彼の隣に立てるように努力した。しかし、彼は彼女を選び続けた。

 私は色々なルートを選択した。次第に私は自分がなんなのかわからなくなっていった。


×××度目の人生

 ーーそうか、やっとわかった。私は邪魔者なんだ。この恋が実を結ぶことはないんだ。

 何度も何度も邪魔をされても、恋に落ちるそれはまさに『真実の愛』なのだろう。

 ーー私でははなから勝ち目はなかったんだわ。

 そう悟った私は彼の前から去ることにした。

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