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実は……めっちゃ不安でした!

まずは今の私の生活をご覧いただきましょうかね。



田畑菜果(二十七歳)=私の一日は、賑やかに始まります。


ほーけっきょっこー!

ほ、ほ、ほーけっきょっ…………。


「っ!」

壁にかけられた鳩時計からニワトリともホトトギスともわからない鳴き声が大音量で鳴り響く。

小さな部屋中に響く大音量は朝に弱い私にはかなーり効果的。……大きすぎて耳と心臓に悪い気もするけど。

「うぉぉ……、」

ほどよくぺったりした煎餅布団からどろどろと体を起こして時刻確認。時計の針は真っ直ぐ一直線。

「……六時。……あれ?」

よく見ると時を告げたハトもどきは口を開けてお家から飛び出したまま。そういえば、さっき変な所で鳴き声が止まっちゃってたっけ。修理は……後で頼も。

欠伸をしながら煎餅布団を部屋の角へ。ほんとはずっと敷いておきたいけど、ガマンガマン。

「えーっと、今日は……これでいっか」

抽斗から大きめの虎柄ロンTにジーパンを出して、スウェットから着替え。……柄はお気になさらず、先に言っておきますが私の趣味ではありません。理由があってです。

「……ーーさてさて外に出て準備をしないといけないのだけど、」

ドアに近づき聞き耳を立てる。

怪しい行動ですが、これは我が精神を守るため、とてもとても大切な行動なのです!

さぁ、今日はどうなっているのやらーー……


「ユキ…… 廊下で寝るなって言ってるだろ。 服もちゃんと着ろ。枕にするな」

「……うぅ、キキ~、着せて~」

「……」

「いでっ! 無言で叩かないでよ~」

聞こえてきたのは、固い声とのんびり声のいつものやりとり。ーーこれがあるからすぐに出てはいけないのだ。ユキさんの裸は朝から刺激が強すぎる。

「ほら、着せてやったぞ。 いい加減起きろ」

「……ふぇい」

「……ったく。で、キビ? なにしてんだ? さっさと起きろ」

ドンドンと叩く音が聞こえてくる。キビさんまだ起きてきてないのか。……たぶん、また厄介なことになってるんだろうなー。

……ーーいつまでもこうしてはいられない。今日の朝ごはん当番は私なのだ。

「……」

音を立てないようにそっとドアを開けて部屋の外に出る。

廊下にはこちらに背をむけた小柄な男性が、ムキムキな男性を脇に抱えて目の前のドアを叩いている。

ーー改めて見るとすごい光景だ。

「……ほわ? ナノカちゃん、おはよ~」

抱えられたムキムキな男性ーーユキが顔を上げる。

「……あ、おは、ようございます、ユキさん」

切れ長のぽやんとした顔によれたTシャツから見えるムキムキな筋肉のアブナイ香りに声が詰まる。やっぱり朝から見るには刺激的すぎる。

「ん?」

「ふぎゃ!」

ユキさんが動いたことで気づいたのか、小柄な男性ーーキキが振り返る。と、同時に脇に抱えていたユキさんを床に落とす。

ユキさんはそのまま床とご挨拶。……顔、大丈夫かな。

「おはよう、ナノカ。ちゃんと起きれてエライな」

「! ーーいえ! 当番ですし! おはようございます、キキさん」

キキさんがくるりとかわいい笑顔で背伸びをして頭を撫でてくれる。キキさんのさりげなさに朝から顔が赤くなっていく気がする。

ちなみにキキさんはユキさんを落としたことは全く気にしない。ユキはこれくらい大丈夫。とのこと。私も最初は気にしていたけれど、今は……いや、まだちょっぴり顔は心配してます。

「ナノカはこれから朝めし準備か?」

「はい。顔を洗ってから準備しますね」

「いつもありがとな。助かってる」

「い、いえ……」

このド直球な言い方もかわいい顔とのギャップで、朝からは破壊的なんだよね。

「……あだだ~。も~、キキもナノカちゃんもひどいよ~」

「あ、だ、大丈夫ですか? ユキさん」

床のユキさん、忘れてた。

というか、まだ床だったのね。

「平気だろ。……ナノカ、キビ起こしたら行くから朝飯よろしくな」

「はい」

「も~」

ユキさんの抗議に目もくれずキキさんはそう言うとキビさんの扉に戻っていく。

さて、私も早く顔を洗って準備しなきゃ、と洗面所に向かおうとしたところ、

「ナノカちゃん、おれ手伝うよ~」

「え!?」

ユキさんの言葉に固まる。

すぐさま最小限の被害で収まる手伝い計算。よし。

「……ありがとうございます。じゃあ、私顔洗ったらすぐに行くので、テーブルだけ拭いておいてもらえますか?」

拭くだけなら最小限だろう。たぶん、きっと。

「ほ~い」

「……」

ふらふらしながらユキさんが台所へ向かっていく。その後ろ姿には不安しか感じない。

……やっぱり拭くのもダメだったかも。若干、いや、大いに心配だ。

って!

ユキさんを見守っている場合じゃない。

心配ならなおのこと早くしないと、台所があんなことやこんなことに!?

そんな脳内大慌ての私が廊下の途中にある流し台で素早く顔を洗う後ろで、

「キビ、入るぞ」

「え!? ちょ待っーー……」

ガギリ。

と、何かが壊れる音が聞こえてきた。

しびれを切らしたキキさんがキビさんの扉を開けたらしあた。破壊をもって。

キビさんの悲鳴が聞こえてきている気もするけど……気にしないでおこう。

鍵、キキさんには意味ないからなぁ。


今はとにかく! 台所が無事でありますように!

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