旧優生保護法違憲判決と令和にもある「経済的優生思想」について
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は「旧優生保護法」と現代にも垣間見える「経済的優生思想」について僕の個人的な解説でもって見ていこうと思います。
◇戦前より酷くなった旧優生保護法
質問者:
旧優生保護法って言うのは具体的にどのようなものだったんですか?
筆者:
戦後直後は出生率が5を超える状況だったと共に供給力不足からの食糧価格がハイパーインフレの状況で預金封鎖が行われたような状況でした。
そんな中で「不良な子孫」の出生を防止することで社会の負担を軽減することを目的とした法案として衆院では全会一致での可決だったようです。
48年からの保護法の施行後は、手術時に障碍者らの体を縛ることも一時容認し、強制的な手術が加速しました。
96年までの48年間で2万4993件の手術が行われ、このうち1万6475件が本人の同意がないものでした。人工妊娠中絶の被害者は約5万9000人とされ、最年少は9歳の女性から不妊治療がなされたということもあったそうです。
1954年や1957年には、当時の厚生省が「不妊手術の件数が計画を下回っている」として、年度末に向けて計画通り手術を進めるよう求める通知を、都道府県宛に出したといったことまでもありました。
戦前にも国民優生法と似たような法案があったそうですがこの法案は、本人や親族の同意が重視されていました。ところが、この旧優生保護法は戦前の時より状況が悪化したという事です。
質問者:
治安維持法とかあった戦前より酷い法案って凄いですね……。
筆者:
確かに障碍のある方があまりにも多すぎると社会が成り立たなくなるのですが、
必ずしも障碍が遺伝するものでもないですしね。
当時の遺伝子検査の技術を考慮したとしても無理やり子供の段階から不妊にしてしまう合理的な理由は無いと思いますね。
障碍のある子だと分かったとしても育てるケースと言うのもありますしね。
また、身体的な問題だけでなく精神分裂症、躁鬱症、癲癇も「遺伝的精神病」とされたものも不妊するべき項目に含まれたために、
これらは外的要因があるであろうにもかかわらず、無理やり不妊治療させられたケースもあったと思われます。
更に、この法によって、障碍のある方々は、長きにわたり「不良な子孫」の烙印を押され続けるなど差別の温床になっていました。
いったい何をもって優生とするのか? そのラインすらよく分からないまま50年近く法律が存在していたという事です。
ちなみに1996年からは旧優生保護法は廃止され、母体保護法に移行しました。この法案では保護者・親族が希望した障碍者に対する不妊手術のみが認められるようになりました。
◇裁判での焦点
質問者:
しかし、1996年に法律が廃止から最近の地方裁は2018年と20年以上空いたのはどうして何ですか?
筆者:
例によって国が「当時は仕方なかった」「合法だから問題ない」と延々と主張し続けていたためですね。
また、あまりにも古いものだと公文書は破棄されてしまいます。
既に関係している書類の8割から9割が廃棄されているとされ、全容すら分からない状況になっています。
更に、障碍のある方は問題を認識することが難しい方もいたかもしれません。
弁護士団体もお金のために色々と無意味なしょうもない訴訟をすることも多いのですが、このことについては非常にいい結果を出したと言えると思います。
質問者:
でも、年数が経ち過ぎると権利請求が消滅する「除斥期間」というものがあった気がしますが、大丈夫だったんですか?
筆者:
今回の裁判でもそこが最大の焦点の一つだったようです。
本来なら20年を経過すれば不法行為の損害賠償請求権は消滅しました。
(2020年以降の民法では消滅時効の考え方に変更され、不法行為から20年では自動的に損害賠償請求の権利は消滅しません)
しかし、最高裁は除斥期間の適用が「著しく正義・公平の理念に反する」とし、被害者1人当たり1100万~1650万円(配偶者は220万円)の賠償を国に命じたようです。
まぁ、国がグダグダとふざけた答弁で凌ぎきろうとしていたので当然ですね。
このとから、政治資金についても同じように「合法だった」と言い逃れをしていることから、法律がザルだという事を地道ながらでも追求し続けることが重要だと思いますね。
そうで無いと中々権力者が非を認めるという事はありませんからね。
◇今でも「政府が国民を貧困化」させている上に「金のない奴は子供を作るな」という潜在的思想がある
質問者:
ところで表題にあった「経済的優生思想」ってどういう事なんですか?
筆者:
結局のところ今の日本の少子化の問題で一番大きな要因としては「若者の経済的困窮」です。
それでいておきながら結婚した方でも望む数より少ない子供の数である要因の1位が「高齢過ぎるから」、2位が「お金がかかりすぎるから」の2強になっています。
そして今の少子化対策と言うニックネームの「子育て対策」では今現在給付を受けられる子供を持つものはさらに富み、持たざる者は子育て支援金を取られるという「隠れ経済優生思想」と言っても過言ではない状況なのです。
質問者:
子供が多い家庭と言うのは元々裕福であることが多く、子育ての対策のお金を貰うためと言う可能性は低そうですからね……。
筆者:
そうです。
他のエッセイで何度も語る通り、「子育て対策=少子化対策」になるためには2000万円ぐらいを長期に分けて給付するぐらいしなければインセンティブとしてお話にならないのです。
生半可な子育て支援策は少子化対策に全く結びついていないことは北欧を含む先進国の出生率低下を見ても明らかと言えます。
戦後直後は建前こそは「食糧危機を防止するため」と言いながら優生思想の価値観の押し付け、
今現在は、建前こそ「少子化対策」「年金制度の維持」と言いながら無い人間からお金を取って、富む者にお金を振り分けてさらなる格差社会の促進させ、「事実上の優生政策」と化しているという事です。
質問者:
これが分かりにくい形でやっているから何とも言えないですよね。
不妊施術とかいう分かりやすい形では無いですから……。
筆者:
善意で行っているのだとしてもやっていることは国は手を変え品を変え国民の人口を抑制しようとしている状況に限りなく近いと言えます。
そして、社会保険料(年金制度)で世代間格差を作り若者に負担を押し付けている構図があります。無駄に延命するよりさっさと廃止した方がマシなレベルの制度です。
7月3日の厚生労働省の年金の財政検証の発表では
『厚生労働省は、将来の公的年金の給付水準を試算する5年に一度の「財政検証」の結果
年金の給付額の目安を現役世代の平均的な手取り収入の半分を下回らないように定めていて、2024年度は61.2%。
今回の試算では、経済や労働人口が伸びれば50%以上を維持できるとする一方、経済や労働人口が伸びなければ33~37%まで落ち込む。』
とまぁ、労働人口は基本伸びませんから今後年金の所得代替率が4割を切るのは確定的と言えます。
(外国人の方を増やせばまた別の問題が生じることは間違いない)
このような先行きが不透明な年金制度ではよほどの金持ち以外は子供を増やそうという発想にはなりにくいと思います。
複合的なシステムでやっているために分かりにくくなっていますが、「お金持ちが優生」だと暗に言っているように思えますね。
質問者:
お金持ちが優生と言う思想家は分かりませんが、現在の統計上はそう思われても仕方ないですね。
筆者:
違憲とならないように高度なやり口だと思うのですが、やっていることはずっと変わっていないのかなと言うのが、皆さんどう思われるかは分かりませんが僕の感覚としてはありますね。
僕はこの状況を少しでも打開する可能性を探るために、この異常な世の中を解説していき、制度の改善・廃止、消費税減税・社会保険料を減らす方向にもっていきたいと思っています。
皆さんがご覧になって下さるのがいつもとても励みになっています。
この様な時事問題や政治・経済について書いておりますので、よろしければまたご覧ください。