表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/111

10


 かしこまりました、少々お待ちください、と言って、店員の男性は会釈して去っていった。


 私はまたジュディに顔を寄せる。「あら、定番じゃない」


「こういうのは定番をひと工夫するからいいんだよ」


 一理あるわね、と私は応えた。あの親しんだ味がこうも変わるのか、と思えることが肝心なのだ。



 ティラミスは5分もしない内に運ばれてきた。運んできた店員の男性がまた離れたのを見計らって、さてさて、とジュディが呟いた。


「ホイットニー、手もとの粉チーズを取ってくれる?」


「まさか、ティラミスの上に粉チーズかけるの?」


 そうよ、ジュディは微笑んだ。「カルボナーラの上にさらにチーズをかけるみたいに味が膨らむのよ」


 まぁ、分からないでもない。チーズを使用したスイーツにさらにチーズを追加して不味くなることは考えづらい。よほどマイナーでトリッキーなチーズを使用しない限り。そして、テーブルに備え付けの粉チーズは、数ある中でもポピュラーなペコリーノチーズである。


「まぁまぁまぁ、ここは1つ騙されたと思って」


 ジュディはそう言って、右手をこちらに伸ばしてにぎにぎとしてみせた。


「いいでしょう」と私は言った。「でも、キッチンの人たちが見た目にも気を配ってつくったものなんだから、そのへんしっかり考えてきれいにかけるのよ」


 はーい、とジュディ返事をした。私は手もとにあった円筒状の粉チーズの容器を彼女に渡した。彼女は舌を出しながら集中した目つきでティラミス2つに粉チーズをまぶしていく。まるでカレーライスみたいに、茶色く四角い表面を約半分にこんもりとするかたちで盛った。彼女らしいのきれいに、私は幾分微笑ましくなった。


 彼女は粉チーズの蓋を閉めてから、ふぅ、と1つ息を吐いた。そして、粉チーズをテーブルに置いてからキラッと笑った。「さぁ、召し上がれ」


 ではでは、と私はケーキフォークを手にとって、チーズのかかった部分を切り分けて口に運んだ。

次話は明日の21時台に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ