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 料理は15分後には全て出揃った。私とジュディは息を合わせていただきますを言って、さっそくに食べはじめた。


 まず、頼んだ品それぞれ1口ずつ手を付けて、おいしいと感想を言い合った。と言っても、リーズナブルなチェーンレストランの味だ。複雑で多層的な味わいや匂いをまさに文豪的な麗句で並べ立てるようなことはない。濃厚、甘い、クリーミー、しょっぱい、といったシンプルで漠然とした文句の応酬だ。しかし、私たちにとってはそれこそがよいのだ。脊髄反射的でリズミカルな言葉のキャッチボール、感覚を感覚のまま吐き出すこと、これは若さの特権だ。


 その時代だからこそ絵になるコミュニケーションというものが、それぞれの時代にちゃんとある。いまの私たちは、どちらかといえば肉体が思考よりも優位にある時代だ。また言い換えれば感覚を表現するよりも感覚を受容することの方が鋭敏な時代。そして感覚は料理と同じで鮮度がある。言葉に置き換える時に、より良い表現を模索しようと時間を労すれば、感覚はどんどんと乾き失せていく。歳を重ねればその部分を経験で補えるようになるが、ティーンエイジはまだそこが不十分だ。だからこそ、分かりやすい味を刹那にそのまま放出すること。そのためにこそ、こういう画一化された味の大衆的な飲食店が必要なのだ。


 またこのあたりが、いい大人がパートナーをエスコートするのには不適切という言説の核となる部分でもある。それは人生的蓄積に乏しいと見せることに他ならないからだ。



 私たちは残さず注文した料理を平らげた。紙ナプキンで口を拭いてから少し間を置いて、ジュディからデザートの提案があった。


「手軽なアレンジでおすすめな食べ方があるんだけど、試してみない?」


「あまりに下品じゃなければね」私は答えた。「お店だしね」


 うーん、ジュディは喉を鳴らした。「まぁここは1つ多めに見てよ」


「じゃああまりに目に余るようだったらストップをかけるわ」


 よしきた、とジュディが言ってから、店員を呼んだ。さっきと同じ男性が来て、彼女はさっと2枚分の追加の注文用紙を記入し彼に渡した。


 彼は言った。「お2人たりとも、ティラミスでよろしいですね」


 はいぃ! とジュディは気持ちのいい返事をした。

次話は明日の21時台に投稿予定です。

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