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店員の25歳そこそこに見える黒髪短髪の男性が、用紙を見て注文を確認する。
「左手の方がイカ墨のペンネに、エビのサラダとポテトの入ったコーンスープでよろしかったですね」
はい、と私は答えた。
「それで足りるの?」
そう言ってジュディは微笑んだ。
「後でスイーツを追加注文する前提よ」私は言った。
なるほどぉ、とジュディは上機嫌に答えた。自分も頼みやすくなった、という魂胆だろう。
店員の男性は1つ咳払いする。ジュディの分のメニューの復唱をちゃちゃっと済ませたいのだろう。それは当然の思考だった。店内を見た感じ注文待ちのテーブルが2つある。彼には早くそちら受かっていただかないといけない。
失礼しました、私は言った。彼は、いえいえ、と答えてニコッと値札のついたような笑顔を浮かべた。
「右手の方がエスカルゴバターのボンゴレパスタに、チーズインハンバーグとチーズフォカッチャでよろしいですね」
はぁい! とジュディは元気に返事をした。
それではしばらくお待ちくださいませ、と彼は軽い会釈をしてから翻り、別卓の注文を伺いに行った。
私は1つ間を置いてから、ジュディの方に顔を寄せた。
「これもスイーツ頼むこと前提のメニューなのかしら?」
そうだよぉ、と言ってジュディはふっふっふーと笑った。「明日の求人応募のために力をつけないとね」
「でも、明日行って即面接とも限らないのでしょう?」
「備えあれば何とやらだよ」ジュディは言った。
ふふ、そうね、と私は答えた。「せっかくだし、お互いのちょっとずつ交換しましょうよ」
お、いいねぇ〜、とジュディは笑った。またそこから、他愛のない会話がはじまった。
次話は明日の21時台に投稿予定です。




