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こんこん、と私は丁寧にジュディの部屋の扉を叩いた。「ホイットニーよ、どう? 荷解きは捗ってるかしら」
いつもと違って廊下に自分の声だけが響くことに、ゾワゾワと妙な気分になった。
うーん、ぼちぼちかな、とジュディの声が返ってきた。その言葉を、私は馬鹿正直に受け取らない。私と彼女のぼちぼちの基準は全く異なることを知っている。
「ふーん、とりあえず入るわよ」私は言った。
どうぞー、と彼女の声が返ってくるのを待ってから、私は扉のノブを回して入った。
「あー、思った通りね」
私は靴のまま玄関に立って、ジュディの部屋を見渡して言った。案の定、トランクの中からとりあえず荷物を引っ張り出しただけで、そこからの整頓はまだほとんどされていない。まるで無敵感を振りかざす3歳児のように、座り込む彼女とその傍らのトランクを中心として円状に荷物が散乱している。
「何がぼちぼちよ」
私は靴を脱ぎながら言った。
「私の計画の中ではこれがぼちぼちなのよ」ジュディはにへらと笑い返した。私がお節介をかけに来るのを最初から想定していたみたいに。「私はものに宿る思い出も丁重に扱っているのよ」
「端からそうは見えないけどね」
私は脱いだ靴を揃えて置いてから、ジュディのもとへ寄った。「せめてもう少し広げずにできないものかしら」
「もう、こういうのがいいんじゃない。とりわけ自分1人だけの時なんかは」
「そんなものかしらね」
私はジュディを囲む荷物の前に腰を下ろす。その中から1つをおもむろに取り上げた。「あら、これって先々週にうちの近くの小川で採取したガーネットじゃない」
私が手にしたのは、手のひらにおさまる円柱状の透明なケースだ。そこに小さな赤みを帯びた石がいっぱいに入っている。
「そうそ、持ってきたんだぁ。シンディに手伝ってもらってアクセサリーに加工しようと思って」
夏休みの遠出はシンディの祖父の別邸のみにとどまったけれど、領内やその近場は自然を中心にジュディ共にいろいろと巡った。そのことはケビンとの会話のネタに使わせてもらって、ペンダントの通話の効力をうまく使い切ることができたのだ。ただあえて言うが、けしてケビンと話すためだけにジュディと外出した訳では無い。ただ気持ちよく休暇を過ごすことを突き詰めた結果である。そして、それは見事完遂されたのだ。
「とてもいいじゃない」私は応えた。「そう言えば、採取に夢中になったあなたは水底柔らかい部分に足を取られて尻もちついてたわね」
「あはー、そんなこともあったね」
こうやって、私はジュディのペースにまんまとはまっていった。
次話は明日の20時台に投稿予定です。




