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 ジュディは私の1手に、微妙に表情を変えた。自身が優位と踏んでからの余裕綽々な笑みに、1滴の疑義が波紋をたたせた。よしよし、と私は表情に出さないように思った。この間髪を入れない差し手は、その1つ前の段階から決めていた。ジュディが駒をどのように動かそうが、盤面が大きく変わらないと分かりきっていたからこそ、私はある種反射的な1手を打った。この2手はある意味で1つなのだ。プロ野球の投手がスローカーブの後にピシッとしたストレートをコーナーに決めるように、個別の行動を1つの緩急として包含すること。大事なテクニックの1つだ。分かっていて、これまでなかなか使うことができなかった。ジュディを舐めていたとか、このゲーム自体を軽んじていたとか、そういうわけじゃない。ただ、私自身の心持ちが後ろ向き過ぎただけだ。



 ううーん、とジュディは口先を曲げた。あるいは、それは彼女の演技であり、彼女にも彼女なりの咄嗟の戦略として行っているのかもしれないけれど、彼女にとって心地よかったはずの間や空気感をかき消すことには確実に成功した。


 さて、一見すれば最後の青い幽霊だから遠ざけた、と考えるのがセオリーだし、事実そうなのだけれど、緩急という伏線が伴ったそれはまた別の意味性を彼女に誤認させる力を持つ。それが実際どのように作用したかは、彼女の次の手で分かる。


 ジュディはこれまであった、よし、や、これだ、と言った反応を示さず、無言のまま先ほど動かした駒をまた1つ前進させた。

 

次話は明日の21時台に投稿予定です。

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