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「お、今日はさっと駒を動かしたね」ジュディは言った。


 私は駒に目線を落としたまま答える。「初手はどれだけ考えてもしようがないって分かったからね」


 ジュディは、ふふーん、と鼻を鳴らしてから、彼女から見て前衛左から2番目、私の方と同じ位置の駒を動かした。


 私は間髪を入れず前衛の別の駒を動かす。ジュディも同様に駒を動かす。まさに同じ戦術の真っ向勝負だ。



 どちらも積極策に打って出ている以上、盤面の展開も非常にスピーディーだった。それぞれの前線が触れ合うと、お互い4個ずつの駒を取り合った。そこにきて、戦況に大きな変化があった。私の残りの駒が青い幽霊が1体で赤い幽霊が3体になり、ジュディの方が青い幽霊が3体で赤い幽霊が1体という状態になった。つまり、ここから赤と青それぞれ1体ずつとならない限り、彼女が青い幽霊を取るもしくは私が赤い幽霊を取らされることで決着がつく。だがしかし、私の青い幽霊は彼女から1番遠い位置にある。具体的に言うと、こちらから見て縦3マス目の1番左の位置。そして、同じ縦3マス目にもう1体赤い幽霊がいる。この状況をうまく活用して、私は彼女に赤い幽霊を全て押し付けないといけない。矢印マス侵入での勝利は切り捨てだ。この一筋の勝利に賭ける。



「んふふふー、どうやらホイットニーの青い幽霊は後1体だけのようだね」


 ジュディが直前に取った私の3つ目の青い幽霊を手にしながら言った。


 そうね、と私は応えた。「ちなみに、どこに赤い幽霊がいるか分かるかしら?」


「ええ、どこだろうぉ?」


 ジュディはそう言って、盤面をきょろきょろと見渡す。私はその視線の先を追う。彼女は――恐らくは意識をして――満遍なく観察したけれど、弱冠割合が多かったのが、実際に私の赤い幽霊いるところだった。まぁセオリーに考えれば、そこにあると思うのが当然である。私はここから、実は違ったんだと、彼女に思い込ませる必要がある。


 さぁ、どうしようか?

次話は明日の21時台に投稿予定です。

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