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私とジュディはまだしばらく、無人の広い湯船を満喫した。そして10分くらいが経って、他の利用者が入ってきたのを区切りとし浴室を出た。脱衣所でスキンケアとヘアドライまで済ませて、心も体もぽかぽかとした状態で自分たちの階に戻った。また階段付近でぺちゃくちゃと少し談笑してから、私たちは別れた。無論、私はまたジュディの部屋に速やかに出向く。お泊りをするにあたって、幾つかの事前準備があるからだ。
部屋に戻ると、私は洗濯かごに使用したバスタオルや脱いだ衣服を入れた。洗濯かごの中は学園までの移動中に洗えなかったのも含めていっぱいになっている。私はまずそのかごを持って部屋を出て、廊下の洗濯乾燥機に入れて回した。また乾燥まで終わったところを見計らって取り込みにこよう。かごは洗濯乾燥機の足もとに置いておく。今日なら誰の邪魔にもならないだろう。
また部屋に戻ると、洗濯に出さなかった制服のスカートとリボンタイをハンガーに掛けてクローゼットに閉まった。次いで大きめの手提げかばんに枕と乾いたタオル、歯ブラシ・歯磨き粉・コップ・リップクリーム等を詰めた。
準備が整うと、私はさっそくジュディの部屋に向かった。
こんこんと先ほどのように、私はジュディの部屋の扉をノックした。
「ホイットニーよ」
私はそれだけを言った。声量はなるたけ抑えて、廊下に響かないように努めた。あのゾワゾワとした感覚はしばらくごめん被りたかった。いま思い返すと、まるで後ろから急に見知らぬ男に声をかけられるような不愉快さがあった。自分の声なのに、幾重にも反射するとまったく違う何かに変質してしまうものなのだ。
はいはーい、との部屋の中からジュディの親しい声がした。たたた、とこちらに駆け寄る音もした。
開けるねー、とジュディの声がして、私は扉から1歩離れた。ガチャ、とわりかし勢いよく扉は開かれた。その音もれなく廊下に響くも、あまり不快感は感じなかった。私はそこに、人間の声の本質的不気味さのようなものを感じてしまった。
「ほれほれ、さっさと入った入った」
ジュディは玄関から上半身を乗り出し(右足を学生靴の履き口につま先だけ差し入れて)、ドアノブに幾分体重を掛けながらにっこりと笑って見せた。ジュディの声は廊下に拡散せず、彼女の部屋の中でいい具合に留まってくれていた。
はいはい、と私は言って、扉の上部側面に手を掛けた。
ジュディはそれを見て、上半身を室内に戻し1歩後ろに下がった。
お邪魔します、と私は言って彼女の部屋に入った。もちろん、脱いだ靴はきれいに揃えた。ついでにジュディの靴の向きも直しながら。
次話は明日の21時台に投稿予定です。




