エルフの村2
ガインさんに付いていって長老がいる部屋から出た俺たちは、さきほど登ってきた木の枝の階段をさらに上へ登ると、この聖樹よりいくつもの木に向かってロープが張られており、そこにはいくつかブランコみたいな乗り物があった。
ガインさんはそのうちの1つに向かってから、こちらに振り返って話をした。
「おい、先に行っているから、そいつに乗って付いてこい。」
「え?付いてこい?」
そう言ってガインさんは近くに置かれていたハンガーみたいな形をした物を取ってロープに引っかけると両手で掴みながら、そのまま滑り降りて向かいの木の広場へ着地した。
いやいや、こんな高いところから怖くてムリ!
なんで平気で移動できるんだ?
「あら、上杉は高いところは苦手?でもあのイスに乗って降りたら安全よ。」
「本当ですか?なんか凄く不安定に見えるんですが。。。」
「よく見て?ロープの周囲に薄い膜があるでしょう。あれは風の精霊が風の道を作ってくれていて、その中を移動するように作られているの。だから安定して降りられるわよ。」
サシャンさんにそう言われてよく見てみると確かにロープを中心に人ひとりが通れるぐらいの風のトンネルのような道があった。
それに僅かだがその道に向かって風が吹いていて向かいの木の広場まで続いていた。
「ほら、早く乗って。あまり待たせるとガインが起こるわよ?」
サシャンさんに急かされて、ロープについているイスに座ってみた。
するとまだ降りようとしていないのに、風に押されるように勝手に動き出した。
「ちょっと待って!?まだ心の準備できてね~~~!」
きちんと座っていない状態だったのでイスにしがみつく様な形で滑り降りたが、
イスを掴んでいた手が汗をかいていて全てバランスを崩し落ちそうになった。
すると風が強く吹き、バランスを崩していた俺の体を支えてくれてイスに座らせてくれた。
そして風が俺の体を常に支えてくれているのかすごく安定して、向かいの木の広場まで滑り降りることが出来た。
続いてサシャンさんと双子のエルフが、ガインさんと同じようにハンガーみたいなもので降りてきた。
そのあとはガインに付いていきいくつかの桟橋を渡って移動すると、木にドアが付いている場所の前で止まった。
「ここがお前が泊まる場所だ。」
そう言ってガインさんはドアを開けて中に入っていった。
俺もそれに続いて入ると、部屋の中はとても明るく、真ん中に木でできた楕円形の大きいテーブルと座る部分が花柄の異様に凝ったモックチェア、そしてらせん状に伸びた柱と逆側に伸びた螺旋階段、窓からは太陽の光が入ってきて、温かみを感じる落ち着いたところだった。
木の中にこんなオシャレな部屋あるとは思わず、よく見るとところどころに枝が少し伸びて緑の葉っぱがついており、自然の香りが充満していた。
「そこの階段を昇ると部屋がいくつかある。どれでもいいか好きに使うが良い。」
「ありがとうございます。とても素敵な部屋で感動しました。」
「一緒に泊まれる場所がここしかなかったからだ。本来は牢屋に入れているところだ。」
「えっと、一緒に泊まれる?それってガインさんもここに泊まるんですか!?」
「当たり前だ。貴様のことは信用していない。ならば見張りをつけるのは当然だろう。」
確かに会ったばかりで、あれだけエルフに嫌われていた態度を取られているし、信用されていないのは仕方がないけど、村から出るまでずっと見張られるのか~。
こんなに安らげる部屋なのに、ガインにずっと見張られてたら逆に疲れが溜まりそう。
「もう、別にガインが一緒に泊まらなくても私が一緒にいるから別に大丈夫よ。」
「いや姫様、何を言っているのですか。姫様は専用の部屋があるのですからそちらへ泊ってください。」
「別にいいじゃない。旅をしていた時は多くの人と一つ屋根の下で雑魚寝とかしていたわよ?大したことないわよ。」
「こちらは全然大したことありましたよ。寝ている間によこしまな輩が姫様を襲おうとしたのも1度や2度ですみませんでしたし!しかも肝心の姫様は熟睡して全然起きませんし!」
「そのたびに変態たちは精霊に吹き飛ばされた。そして裸に剥かれて蔓で巻き巻き吊し上げの刑。当然そんな奴らは罰として身ぐるみを全部剥ぐ。」
「姫様、少しはご自身の身を案じてください。。。」
「ははは、まあ何かあっても私なら大丈夫!助けるって決めたのは私だから責任取って面倒見てあげないとね。それに上杉君に色々と話したいし、彼も色々と聞きたいことあるだろうから、一緒の場所にいた方が都合が良いのよ。」
「姫様は本当に相変わらずですな。まあ私も一緒にいますので何も問題はありますまい。」
どうやら全員この部屋で止まることになった俺たちは、階段を上って各々の部屋を案内された。
俺は階段上ってすぐ近くの部屋で、ガインさんはその隣、サシャンさんと双子のエルフたちはさらに上の大きな部屋に泊まることになった。
しかしさっきガインさんがサシャンさんのことを姫様と言っていたけど、もしかしてエルフ国のお姫様?それってめちゃくちゃエラい人じゃん!?
正直その人にサシャンさんと呼んで良かったのか今さらながら不安になってきた。
「部屋割りも決まったし、そろそろお腹も空いてきたしご飯にしましょう。」
そう言ってサシャンさんがテーブルの奥のキッチンらしき所へ向かった。
というか姫様だよね。料理できるの?
そんな疑問を持っていたのが、サシャンさんは革のショルダーバッグから肉らしきものといくつかの野菜を取りだし、腰に付けていたナイフで切り刻み始めた。
そうすると双子のエルフは慣れた感じでサシャンさんを手伝いながら、牛乳やバターなどの乳製品を用意して、サシャンさんが刻んだものを何やら呪文らしきものを唱えて火をつけて鍋に入れて炒めたり、
また何か唱えたと思ったら空中からいきなり水が出たりと、まさしく魔法料理と呼べるものを見た。
そうしてしばらくサシャンさんたちの料理をテーブルの近くのイスに座って見ていると、部屋中に美味しそうな良いにおいが漂い始めた。
「はい、お待たせ!ハニーベアの肉を使ったクリームシチューよ。聖樹の葉っぱで包んでおいた肉を使ったからかなり美味しく仕上がっているわ。」
そうしてキッチンから鍋をもってきたサシャンさんが、木の器にみんなの分をよそいでくれた。
本当姫様なのか?と思いつつ、この世界に来てから何も食べておらずお腹が空いていたので
先にご飯を食べることにした。
「何これ!?めちゃくちゃ美味い!」
特にサシャンさんがさっき言っていたハニーベアの肉だが、一口噛むと旨味が凝縮された肉汁とほんのりした甘みが見事なコラボレーションを極めていて、濃厚な匂いが鼻を突き抜けて今まで食べたことがない美味しさを出していた。
またこんなにパンチの効いた肉を使っているのに、シチューの味が全然負けておらず、むしろこれ以上にないというほど完璧に合っていると思うほど、濃厚な味を出していた。
「そうでしょ!?ハニーベアの肉とクリームシチューってとても合うのよ。10年ほど料理店で勉強していたけど、私の自慢の1品の1つよ!」
「いやこれは確かに俺の国も食べ物は結構充実していると思ってますけど、このシチューはほとんどの人が食べたことがない美味しさと思いますよ。」
「それは良かったわ。旅をしているとき、毎日保存食で嫌になってね、それじゃ旅の途中でも料理しちゃえばいいじゃないと思って、料理店に弟子入りしたらハマっちゃって今でも結構料理しているのよ。」
「姫様の料理は絶品。胃袋を掴まれた私はもう姫様のお嫁になるしかない。」
「キャル、本来は私たちが料理をしなければならないのよ。」
「ムリ。向き不向きがある。姉さまはもっと無理。モンスターを瀕死にさせるようなもの食い物じゃない。」
「な、何を言っているのよ!ちょっと本気を出せば食事ぐらい作れるわよ。ちょっと待ってなさい、今から作ってあげるわ!」
「止めて。まだ死にたくない。」
そんな他愛無い会話をして食事を楽しんでいた。
双子のエルフも最初は険悪な雰囲気だったけど、ちょっと慣れたのか大分雰囲気が柔らかく感じた。
まだ会話らしい会話はしていないけど、サカイ町までは一緒だから少しでも会話出来たらなと思う。




