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70代のひとり部活  作者: 種田
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地球三周

10月に今シーズンの最終戦、兵庫県マスターズ陸上選手権が終わってから約1ヶ月が過ぎた。

いつもの年ならシーズンオフでトレーニングはせず、体を休ませている期間なのだが、相変わらずいつもの河川敷に週に一二回やって来て投擲練習をしている。

春先の試合の好調が6月の広島マスターズから崩れ、フォームが崩れたまま最後の試合も終わってしまったので、いいフォームを取り戻してから冬季練習に入ろうというのが、11月になっても投げ続けている理由だ。


長かった今年の猛暑だが、11月も半ばとなるとさすがにこの早朝の河川敷には肌寒い風が吹き抜ける。

ここには春はいろいろな鳥の声が、夏にはセミが、9月になれば虫の声でいっぱいになるが、今は生き物の声は途絶え川風の音だけ。

普段もほとんどひと気のないところだが、この時期ともなると私が投擲練習をしている3時間ずっと、周囲100mに人影はない。

贅沢な時間だ。

砲丸(4K)が11m、円盤(1K)が35mまで飛んでフォームもやっと納得できるようになってきたので、いよいよこの河川敷とは4か月のロンググッドバイが出来そうだ。


私の一年間通じての途切れることのないトレーニングの相棒はルームサイクル。20代後半から70代の今日までの40数年間、今までに3台のルームサイクルが私のトレーニングに付き合ってくれた。

毎週4回、この自転車に乗る。

一回の走行距離は付属のメーターで20キロ。一ケ月に16回乗るので20×16回で320キロ。一年間では320×12か月でごく少なく見積もっても3000キロ。これが40年間なので3000×40年で12,000キロ。

つまりこの40数年間で地球を最低でも3周したことになる。

ルームサイクルは一ミリも動かないまま、私は地球を三周走ったのだ。


ルームサイクルをこいでいる小一時間、録音しておいたラジオ放送を聴く。

以前はNHKラジオの「日曜喫茶室」がお気に入りだったが、それが終わってしまった今はラジオ深夜便の「明日への言葉」や「カルチャータイム」、70年代の洋楽を聴いている。

夏はこのトレーニングで多い時には2キロ、冬季でも1キロの汗が流れる。

年間を通じてこの全身から汗を流す習慣が、この40数年間私が病気らしい病気もせずにこれた最大の理由だと思っている。

3台合わせても3万円のルームサイクルは私の生涯において最も価値ある買い物だった。

体にいいし、年間通じてうまいビールが飲めるのはこんなにうれしいことはない。


ということで、今日もルームサイクルにまたがり、四度目の地球一周にこぎだしていく。


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