部活の夏
朝7時。
立秋を過ぎたせいか、河川敷を吹き過ぎる風にごくかすかに涼しさを感じた。
しかしそう感じたのはほんの一瞬で、雲一つない空から、やる気いっぱいの太陽が今日も私をあぶりたててくれた。
7月28日に岡山市での中国マスターズ選手権があり、9月までは試合がない今は
ホームグランドの河川敷で一人部活に励んでいる。
マスターズ陸上を始めて16年目の夏だ。
炎天下で砲丸や円盤を投げていると、半世紀以上前の高校時代の陸上部の夏休みの練習を決まって思い出す。
山口大学に進学していた超熱血の先輩が帰省して、哀れな子羊のような我々後輩を、頼みもせぬのにいやというほど鍛えてくれたものだ。
当時は練習中には水を飲むのはご法度で、かの鬼軍曹もご多聞に漏れず、今思えば子羊たちはよく誰も倒れなかったものだと感心させられる。
クーラーがまだ普及していなかったあの当時の子供は体が頑強だったのだろうか。
◎あの当時と今とで変わったこと。
17歳が73歳になった。
身長が175センチから173センチに縮んだ。
体重が64キロから75キロに増えた。
短距離ランナーから投擲専門になった。
仲間の陸上部員と一緒に練習していたのが、たった一人の練習になった。
下関市の海辺の高校のグランドが、広島の太田川の河川敷になった。
練習中に飲み物が思う存分飲めるようになった
虫取りの少年たちの姿を見なくなった
やらされる練習から自ら望んでするそれになった
◎あの当時と今とで変わらないこと
真夏の太陽の陽ざしの強烈さ
焼けた地面の暑さ
蝉の声と赤とんぼの群舞
木陰で小休止するときのホッとする気持ち
止まることなく流れる汗
8月下旬になって吹く風にかすかに感じる秋の気配
昨日もそうだが、約3時間の練習を終え、日陰になっている河岸に腰を下ろして一休みするのが、夏の練習の楽しみだ。
日蔭のそこには川からいくらかは涼しい風が吹いてくる。
水の中には鯉やスズキが泳いでいるのが見える。
ミズスマシもいる。
シラサギは河岸で小魚を狙っている。
私の黄金の時間が流れる。