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70代のひとり部活  作者: 種田
37/55

16年目のシーズン始まる

3月7(木)


2024年度最初の屋外での投擲練習。

去年の10月以来約5か月ぶりにホームグランドの河川敷にやって来た。

上空は晴れたり曇ったりで、春は名のみの川からの風の寒さ。


自転車でここにやってくる道すがら、かつて私の孫も通った光明幼稚園は今日が卒園式との張り紙。

中学校も卒業式のようで、制服姿の中学生たちがかばんも何も持たずに学校の坂を上がって行く。

若い人たちが巣立っていく日だが、ロートルの私も10月まで続くマスターズ陸上シーズンへの巣立ちの日だ。

自宅から自転車で20分のこの河川敷で円盤、砲丸を投げるのも16年目の春を迎えた。

時あたかもプロ野球では選手たちが春のキャンプを終えオープン戦が始まっている時期だが、私もまさに同じく今シーズンへの期待に心を躍らせながら川土手をここまで自転車を走らせて来た。


昨年末からの冬季練習の成果に大いに期待して砲丸投げから練習開始する。

準備体操中に何の前触れもなく、突然に腰に激痛が走る。

晴れの門出の日に何たることか。

しばし棒立ちになったまま痛みの薄らぐのを待ち、このまま何もせずにおめおめと帰るわけにもいかず、恐る恐る投げ始める。

自分でも信じられないほど、あきれるほどに砲丸が飛ばない。

五か月ぶりに砲丸を投げるのだから投げを体が忘れてしまっているとはいえ、2023年の練習初日からすると平均して50センチも記録が落ちてしまっている。


円盤(1K)は33mで去年の初日とほぼ同じ記録が出てまずまず。

こちらは円盤投げの初心者である妻に教える時に、時々デモンストレーションで投げて見せてやっているためだろう。

今年の最大の目標は9月下旬に京都で開催される全日本マスターズ陸上選手権大会。

昨年は70~74歳の部(M70部門)の砲丸投げでは11m55で1位、円盤投げは33m12で2位だった。今年は2種目での優勝を狙っているが、円盤投げでは10年来の私のライバルである鳥取のFさんが今年から私と同じM70クラスになる。彼は少なくとも38mは投げるだろうから私もそこまで記録を伸ばしていき、Fさんとしびれるような試合をしてみたい。


2時間半の投擲練習を終えるころには不思議なことに腰の激しい痛みが消えていた。

はて、あの一撃は体のどこに隠れたか、奇怪なことだ。

荒療治がかえって良かったのか?

河川敷はまだ冬枯れの様相だがかすかに春の気配もある。

ちらほら花を開いているのはオオイヌノフグリとアブラナだろうか。


夜になって右腕が肩から手首、指に至るまで全てが傷む。

人差し指から小指までの指の付け根は熱を持って、見た目にもはっきりと腫れあがっている。これは毎年、投擲練習初日の、シーズン開幕を告げる懐かしい痛みではある。

湿布を何枚も貼り、ビールをしこたま飲んで寝る。


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