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70代のひとり部活  作者: 種田
29/55

強い相手

8月8日  


朝7時20分、河川敷到着。

沖縄周辺を迷走している台風の影響か、時々黒い雲が雨を落としながら通り過ぎていく。


男子の円盤投げは年齢によって使う重量が異なっており、M45(45歳~49歳部門)まではオリンピックサイズの2k、M50、M55は1,5k、M60(60歳~64歳以上はすべて1k(女子のオリンピックサイズ)を使って試合をする競技規則になっている。

M70の私は1kの円盤を使って競技をし、普段の投擲練習も1Kの円盤で練習をしてきた。

しかし5日前の練習で35mを3本投げることができ、納得できるフォームに近づいて来たので、今日から1,5キロの円盤を使って投擲練習をすることにした。

その狙いは「投げ筋」の養成だ。

「投げ筋」とは「投げるための筋力」という意味で、私も最近になって初めて知った、陸上競技の投擲選手が使う表現だ。


相撲の世界では幕内の力士が十両、さらには幕下へと下がっていき、その地位に長くとどまると、そのレベルの相撲取りになってしまい、幕内時代の力を取りもどせなくなるとよく言うそうな。

高校時代の野球部の監督で、柔道二段でもあった体育の先生も「自分より強い相手と稽古をしないと強くならない」と言っていた。

1kの円盤で競技をしている今の私にとって「自分より強い相手」とは1,5キロの円盤のことだ。


M55(55歳~59歳部門)の時以来、ほぼ11年ぶりに1,5キロの円盤を投げてみて、自分が完全に1k仕様の体になっていることがよく分かった。

ほんの500グラム重くなっただけなのに、円盤の放物線の高さは出ないし投擲方向のコントロールも出来ない。

ある程度想定内のこととはいえ、飛距離の落ちは想定以上だった。

50代後半から71歳に加齢したことがその理由だとは思いたくない、ただ11年間、1,5キロの円盤を投げることから遠ざかっていたことが原因だと自分を励まし、フォームを工夫しているうちに飛距離は20mから27m20にまで伸びてきた。

10年ほど前の自分を取り戻した。


次戦の福岡での試合(9月10日)までは1,5kを投げて「自分より強い相手」と稽古をし、その実験結果がどうなるか、見てみたい。

楽しみだ。


練習後、いつものように河岸の石段に腰を掛けて一休み。

川面には無数の雨粒が蕭々と降り注いでいる。

我知らず「出船」を口笛で吹いている。

20年ほど前まで住んでいた沼津の港近くに公園があり、しばしばその公園でジョギングをしたものだが、そこに「出船」を作詞した勝田香月の碑がある。


出船


今宵出船か お名残り惜しや 

暗い波間に 雪が散る

船は見えねど 別れの小唄に

沖じゃ千鳥も 鳴くぞいな



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― 新着の感想 ―
[一言] 静岡県の沼津に住んでたのですか? 割と首都圏に近く尚かつ、港町 津々浦々、港町は、だいたい似たような雰囲気があると思います 確かに練習は、ある程度強い相手や負荷が大事だと思いますが やり過…
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