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70代のひとり部活  作者: 種田
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川辺の石段

7月31日  


1時間半、円盤を投げてから、橋の下の日陰で小休止して、午前10時から砲丸投げを始めたがいつになく疲れを感じる。

それもあってか砲丸(5k)が全く飛ばない。

しばらく投げたのち、左腕の引きが弱いのに気がついてそこを意識して投げたところ9m90まで飛んだ。

こんな日はそれ以上投げてもどこかを痛めるのが関の山なので、そこで練習を終える。

早くも夏バテか?


日陰になっている河岸の石段に腰かけ、ペットボトルのお茶を飲みながらしばしくつろぐ。

川の中州ではセミがしきりに鳴いている。

油照りの河川敷に、今人影はなし。

目の前の川の流れを見ていると気持ちが落ち着いてくる。

11時過ぎの今は上げ潮で、川は上流に向かって流れている。

海からの海水がここまで来ているためか水は濁り、かすかに潮の香りがする。

今朝ここにやって来た7時半には引き潮で、川は下流に向かって流れ、水はきれいに澄み、何か新鮮な野菜の香りがした。


中学時代に初めて読み、その後何度か読み返したことのあるヘルマン・ヘッセの「車輪の下」。

主人公の少年ハンス・ギーベンラートが過酷な受験勉強の末、神学校に合格し、つかの間の夏休みに近くの川で一人魚釣りを楽しむシーンがあったことを、こうして川を眺めていると思い出す。

「車輪の下」を読んで語り合った懐かしい同級生たち、紅顔の彼らも今は70歳を超えた。

今年の暑い夏を彼らはどこにいて何をしているだろうか。


川面に浮かんでいるアメンボはいったい何を食べているんだろうと、ふと思う。

河岸の木陰ではシロサギが抜き足差し足で小魚を探している。

ちりめん皺のような波が日を浴びて光っている。



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