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70代のひとり部活  作者: 種田
22/55

人間風車

7月14日  


朝2時に一度目が覚め、眠気が戻って来ないのでそのまま起きてしまう。

ラジオのNHKFMをつけると、思いがけなくサイモンとガーファンクルの「アメリカ」がラジオから流れてきた。

早起きした褒美だ。

約50年前、初めて彼らの「サウンド・オブ・サイレンス」を耳にした時の、それまで全く聞いたことのない音楽に接した新鮮な驚きは忘れられない。

「サウンド・オブ・サイレンス」はポール・サイモンがケネディ大統領死亡のニュースに接した時の彼の思いを曲に仕立てたものだと最近知った。

私にとって彼らのベスト3は、「スカボロフェア」「五月になれば彼女は」「アイ・アム・ア・ロック」。


今日は中国マスターズ陸上選手権前の最終練習。

いつもの河川敷で午前8時から11時30分まで投擲練習。

三日前の練習で「闇の中にかすかな光明を見いだせた」円盤投げ(1K)は再び泥沼にはまり込んだ。

三日前につかんだ「腰で円盤をはじき出す」感覚がきれいさっぱり消えてしまっている。

この現象は私にとってはあまりに日常茶飯事なので

(ああ、またか)

なのだが、忌々しいことに変わりはない。


試しに両肩を大きくスイングさせて投げたところ、再び闇の中にかすかな光明を見いだせた。

肩を大きく振るので「人間風車投法」、別名「ビル・ロビンソン投法」と命名する。

ビル・ロビンソンはアントニオ猪木と名勝負を繰り広げたプロレスラーで、ダブルアーム・スープレックスの使い手として一世を風靡した。

中国マスターズの円盤投げは「ビル・ロビンソン投法」で挑むことになった。


私が練習を始めて一時間ほど過ぎたころ、男子高校生が二人、橋の下にやって来た。こんな時間にやってくるとはおそらく期末試験中か、あるいは今日終わったのだろう。

私から50mほど離れたところで二人はラップの練習をはじめた。

何やらアメリカ先住民の踊りを思わす振り付けで、セリフとも歌ともつかぬものを二人が交互に繰り返している。

(あれはすべてアドリブなのだろうか?)

と私はいぶかる。

よくあれだけ延々と言葉が続くものだと感心する。

まあ、私にはサイモンとガーファンクルのほうが好ましいけれど。



(山頭火の一句)

日ざかりの酔ひどれは踊る



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