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70代のひとり部活  作者: 種田
17/55

「雨にぬれても」

6月29日


午前8時から11時10分まで、いつもの河川敷で投擲練習。

梅雨空からは分厚い雲がたれ下がり、強い風が原っぱを吹き抜けていく。

投擲練習を始めて3時間を過ぎた頃、ついに雨が降り出したので、これで今日の練習は終わりと思って投げた円盤を取りに行った時、頭の上で雷鳴がとどろいた。

周囲に誰もいない、だだっ広い河川敷に私はたった一人。

(これでは避雷針ではないか)

と円盤と巻尺を持って脱兎のように自転車の置いてある橋の下に逃げ込む。


自転車に飛び乗り、土砂降りの雷雨の中、無人の河川敷と川土手を突っ走るが、その五分間の薄気味の悪さといったらなかった。

ほうほうの体で、近くの建物の軒下に逃げ込んで雨宿り。

見ると近くの高校の女子生徒が二人、傘もささず、カッパも着ないで、制服をずぶぬれにしながらも涼しい表情で、慌てる様子もなく悠然と自転車をこいでいく。

(人物が大きい)

と私は思った。

また、若い男性ランナーがひとり、まるで雨など降っていないかのように、軽快に川土手を走り抜けていく。

雷雨の下、隠れるところもない川土手を走るなんぞ、私は金をもらってもまっぴらごめんだ。

(大した度胸だ)

と私は思った。


10分ほど雨宿りしていても一向に雨脚は収まる様子を見せない。

(ままよ!)

とばかり、雨の中に自転車をこぎだす。

腕に当たる雨粒はかなり大きい。

しかし雨に打たれてびしょ濡れになる気持ちよさを何十年ぶりかに存分に味わった。

映画「明日に向かって撃て」の中で使われたBJトーマスの歌う「雨にぬれても」を思い出す。

絶望的状況にあっても、なおめげない銀行強盗のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドを描いた青春時代のあの映画、忘れられない。


(山頭火の一句)

あの雲がおとした雨にぬれている


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