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70代のひとり部活  作者: 種田
14/58

広島県マスターズ陸上選手権  その2

6月11日(日)


土曜の夜、私の寝入りばな、妻が突然布団から立ち上がって腕ふりを始めたので目が覚める。

明日は試合で朝4時起きだというのに、まことに迷惑千万なこと。


さて、夫婦で出かけた尾道での広島県マスターズ陸上選手権。

私の成績は、

・砲丸投げ(4K)11m40で1位(M70部門の広島県新記録、中国新記録)

・円盤投げ(1K)32m82で1位(M70部門)


妻の成績は、

・3000m競歩 20分43秒02で一位(M65部門の広島県新記録、中国新記録)


朝6時20分発の新幹線で尾道に向かう。

乗車前、広島駅のプラットホームで、コンビニで買ってきた「豚肉生姜焼き弁当」とサンドイッチを食べる。尾道に着いてから食べたのでは砲丸投げ開始時間まで間がないので、この時間に腹ごしらえしておくしかないのだ。

新幹線車内で駅弁を食べたことは若い頃から数えきれないほど懐かしい思い出とともにあるが、駅のプラットホームで弁当を食べたのはおそらく初めてのことだ。

古来からの伝統にのっとって弁当は車内で食べる計画でいたのだが、隣のベンチに座ったスーツ姿の男性が一心不乱に駅弁を食べているのを見て、

(プラットホームで食べてもいいのだ)

と、勇気づけられたのだ。

「豚肉生姜焼き弁当」は店で温めてもらわなかったのでご飯は冷たく、豚肉の脂肪は白く固まっており、コンビニ弁当は冷えたままで食べるとまずいという知見を得た。


新尾道駅から、前日に電話で予約をしておいたタクシーで7時半に競技場に到着。

この陸上競技場、以前はびんご運動公園陸上競技場だったのが、最近「ダッシュこざかなくん陸上競技場」と名前が変わった。

作家の林芙美子が「風琴と魚の町」で描いているように尾道と瀬戸内の小魚とは切っても切れない関係ではあるが、試合の闘争心を掻き立てるには「ダッシュこざかなくん」はいささか可愛すぎるネーミングだ。


室内プールの裏手にある広場に行って、持ってきた円盤を投げてウオーミングアップ。その間、妻はベンチでツナマヨおにぎりとバナナで腹ごしらえ。

8時半に選手受付を済ませて、妻とはそれぞれの競技に分かれる。


砲丸投げの試合。

11m17,10m84,11m00,11m40と4投目でやっと距離が出た。

1週間前、山口の大会で出した11m69の更新はならなかった。

なんとなく「無難な」試合になってしまった。

下半身のスイング、肩のスイング、腕の突き出しが「過剰」でないと突き抜けた投げにはならない。

試合中、遠路はるばる秋田県から参加しているM氏から

「あなたの名前は知っています。どんなフォームなのか知りたくて、動画を撮りました」

と声をかけられ、面はゆくもうれしい気持ちになる。


M65部門の岡山のSさんは絶好調。11m53を投げて自身の中国記録を更新した。

65歳の彼は選手たちに交じってもひときわ目立つ180センチ、95キロの堂々たる体格で、上腕の太さは見たところ私の二倍はありそうだ。

今年10月の全日本マスターズ陸上選手権、65歳代の部(65~69歳)砲丸投げの優勝候補のひとりだ。


☆6月11日後半に続く

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