表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

見た目

 燃えて行く森林を、どこかぽーっと他人事のように眺める。

 冷や汗はあるが、焦りはない。そのフェーズはすでに通り過ぎてしまったらしい。


「あ、自分の水……」


 必死に頭を回転させると、一つアイデアが咄嗟に浮かんだ。

 自分の炎なんだから、自分の水なら消えるのではないかという仮説だ。

 できる限り急いで、水を生成する。炎を出した時と同じ要領である。

 軽自動車ほどの水球を作り、頭の上から落とした。


「消えた……」


 やはりそういうことらしく、纏っていた炎が全て消え失せた。

 大丈夫、あとは森の方だけ。


「……」


 物凄い火の高さに、素直に絶望した。

 もう結構広範囲に広がっちゃってるっぽい。

 これ、この量の水を生成できるだろうか……? いや、感覚的に多分できるとは思うのが、爆発とかは起こらない?

 なんか火も水も邪竜のお手製だから、変な現象が起こっても不思議じゃないと思うのだが、ここ一体が弾けたりとかは流石にないよな……? それは変に考えすぎか。

 しかし水を掛けるにしても、火の燃え移る速さに水の生成スピードが全く追いつかない。

 どうしよう……。


「治まれ」


 ダメもとで念じてみる。

 当然そんなもので治まる訳も……あった。


「まじか」


 森に広がっていた火が全て消える。

 そこにあったのが嘘のような、夢でもみていたのかと錯覚するような、一瞬の出来事。

 まあ草木はちゃんと焼けて真っ黒になってるが。


「……収穫は、あったな」


 そう、代償がでかかっただけで収穫はあった。

 驚くことに魔法で作ったものは自分で操れるようである。

 試しに木一本だけ燃えるように念じてみると、灰になるまで火は消えなかったが、周りには全く燃え移らなかった。

 もう少し詳細な検証は必要そうだが、なんか物凄いことができそうな予感がする。

 ただ……やはり代償が、代償が気にかかる。

 大丈夫かな、これ。怒られないだろうか? だいぶ緑が減ってしまったけど。


「……ダメか」


 色々念じてみたけれど、元に戻すことはできなかった。

 邪竜の名に相応しく、回復させるような優しい魔法は専門外らしい。

 でもしっかり火は消してるから、大丈夫大丈夫。何も悪いことはしていない。

 軽く自己暗示をかけつつ、密かに気になっていた自分の顔を水面で確認してみることにした。


「んー?」


 少し見づらいが、目の色までわかるくらい、綺麗に体が水面に映し出される。


「あ、かわ……可愛い」


 そして確認した顔は、大分可愛かった。

 手足にこんなゴツゴツした厳つい鱗を生やしておいて、肌は真っ白に男とも女ともつかないような中性的で整った顔立ち。

 黒髪で横髪が少し長いショートヘア。そして癖っ毛。少し垂れた目元と翡翠の瞳。

 違和感を感じていた口の中は、やはり牙のような歯が生えている。ちょっと触って確認してみたり。

 兎にも角にも、めちゃくちゃに可愛いご尊顔である。神様が気にいるのも頷ける。

 そのままの流れで体の方もちゃんと確認しておくか。


「おー……ちゃんとドラゴン」


 体はちゃんと人外。

 翼や手足など、至る所に生えた緑色の鱗。

 顔くらいの長さがある湾曲した角に、蝙蝠のようでいて分厚い羽。身長の半分以上の長さを誇る太い尻尾。手足の爪は大きく、化け物みたいなフォルムしていた。

 足に至っては指が三本しかないし。

 これを見てもそんなに気持ち悪く感じないのは体の記憶の影響か、それとも新たに発見してしまった自分の中のアブノーマルな性癖か。

 手足を握ったり動かしてみたりして感触を確かめる。


「最高にカッコいいし可愛い……」


 胸がぺったんこじゃなければもっと興奮していたかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ