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食事

 のしのし歩くウロスさんに運ばれながら街を見て回る。

 やはり周りの視線は感じるが、お姫様抱っこされるなんて経験が皆無なので少し楽しい。

 身長差とか外見とかが相まって、側から見ると親子に見えたりするんだろうか、とか考えたり考えなかったりしていると、


「あそこ、何……?」


「……ん?」


 ウロスさんが止まり、指をさす。

 割とリラックスしてたので反応に少し遅れた。


「あー、えっと食べたり飲んだりするところです」


 彼女が気になったそこは恐らく酒場だった。

 確かに外から見ても分かるくらい騒がしく、横を通れば否が応でも意識はそちらに向いてしまう。

 しかしここが一軒目というわけではないので、今までは気になりつつもスルーしていたけど、やっぱり気になるから聞いてみた感じだろうか。

 そういう背景を考えてみると、とても可愛い。

 別にこれは妄想なわけだけど。


「うるさい、のは……なんで……?」


「んー、皆んなで食事をすると、楽しくなっちゃうからだと思います……あとお酒の力」


 ほとんど飲んだことないけど。


「入って、いい……?」


 何が刺さったかは知らないが、話を聞いてさらに興味が湧いたらしい。

 食べるの好きなのかな。

 そういえば森では何食べてたんだろう。

 そんなことを考えつつ、彼女の言葉に頷き、そして、お金がないことを思い出した。


「……まあいいか」


 入るだけなら無料だし、それだけでも雰囲気は味わえるしね。

 店に入ると複数の視線がこちらに向く。ウェイトレスさんは少し驚いた様子。

 しかしこちらに対する反応はそれまでで、店は変わらず騒がしいし、ウェイトレスの女性は忙しなく動きながらも空いてる席を教えてくれた。

 良かった、バレなくて。

 既に宿屋には一回入ってるし街も徘徊してるわけだけど、どこか少し緊張する。

 人間後ろめたいことがあると、そっちに引っ張られてしまうらしい。人間じゃないけど。


「活気すご……」


 お姫様抱っこから解放され、丸テーブルの席に着く。

 周りを見ると色んな種族の人が座っていて、どこもかしこもビール片手に、わいわい食事を進めている。

 その中を一人の女性があっちへこっちへ、料理を持って走り回る。

 なんかみてるだけでも結構楽しいかもしれない。


「ストー、食べよ……?」


 まあそうなるか。

 そもそも座った時点で何も頼まず帰るとか非常識だし、そんな勇気は持ち合わせていない。

 百パー直面する問題を先伸ばすの、自分の良くない癖かもしれない。


「うーん」


 どうしよう。今頼むと無銭飲食になってしまう。

 ここはとりあえず話を逸らしてみる。


「いつもは何を食べてるんですか?」


「いつも……? 分かん、ない……」


「一番最近食べたものとかは……?」


「……食べてない、かも……ずっと……」


 具体的な期間は分からないが、ずっと食べてないらしい。

 どうやって生きてきたんだと思ったけれど、そういえば自分もお腹は減っていない。

 ついでに言えば今のところ疲れてもいないし、眠くなったりもしてない。

 竜という存在には食事とか睡眠とか、そういうのが諸々必要ないのかもしれない。


「ご注文はお決まりですか?」


 配給に一段落ついたのか、ウェイトレスさんがこのテーブルに来た。来てしまった。


「何、食べる……?」


 ずっと食事を摂っていなかったらしい彼女だが、やはり食べる気はあるみたい。

 恐らくこの良い匂いを嗅いで食べたくなったのだろう。気持ちはめちゃくちゃ分かる。

 だって超食べたいもん。金ないからダメって分かってるし、空腹ってわけでもないのに食べたい。

 ずっと食べてなかった彼女だから、よりその気持ちが強いのかもしれない。

 料理ってすごい。


「う、ウロスさんは……?」


「んー……あの、テーブルの……全部」


「ぜ、全部ですか? お一人で?」


「ん……」


 ウロスさんが指したテーブルには男四人が座っていた。

 なので当然四人前はあるわけで。

 ウェイトレスさんも当然驚く。

 しかしウロスさんの見た目もあって納得したのか、注文の詳細を確認した後、こちらの注文も聞いて厨房に戻っていった。

 ちなみに自分は何も頼んでいない。

 この丸テーブルのキャパ的にも厳しそうだし、なんなら金ないし。

 彼女はどういうつもりで頼んだのだろうか。


「ウロスさん、お金は……」


「……ん……?」


 恐らく通貨というシステムを理解していないな。

 いざとなったら彼女を置いて逃げるか、一緒に踏み倒すか、素直に謝るか……それかミルフさんの如く誰かに借りるか……。

 封印されてた身としては、封印されるほどの悪事を起こさなければ許容範囲……いや、その考えは良くないな。

 次からはちゃんとウロスさんが犯罪を起こさないように見張ってよう。次からは。

 本当は今すぐ注文をキャンセルして店を出るべきなのかもしれないがそれは無理。

 だって完全に口が料理を求めてしまっている。

 絶対ウロスさんにちょっと貰おう。

 まあこの無銭飲食は、ウェイトレスが一人で忙しそうだからただ働きするなりして許して……ふと、一際騒がしいテーブルに目が留まる。

 何やら力比べをして……あ、この場で稼ぐ方法、思いついたかも。


「お待たせしました」


 十分くらい待っただろうか。バタバタと働くウェイトレスさんが、この机に再びやってきた。

 量が量なので一度で全ては揃わないが、半分ほどが揃う。

 間近で見ると肉が結構大きく、半分でも結構多いように感じた。


「美味しそうですね」


「うん……」


 キラキラと目を輝かせたウロスさんが、我慢できずにパンを齧り、そのまま飲み込んだ。

 そのままの調子で肉やポテトも悠然と丸々飲み込んでいく。

 幸せそうな顔をしている。どうやらお気に召したらしい。

 良かった、皿ごといかなくて。

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