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 この街の特色としては、冒険者が多いことと、亜人差別がほぼないことが挙げられるそうだ。

 亜人とは、ミルフさん曰く、自分らみたいに尻尾とか角とか人間にはない特徴を持つ人類とのことで、種族によって長所短所は違うが、基本的に人間よりハイスペックらしい。

 黒の森と呼ばれる、恐らくあの森の深い方を開拓する為に実力者がここに集い、そういう街になったと彼女は言っていた。


「……お金、ないんですけど、泊まれたりしますか……?」


「いや、泊まれないよ?」


 そんな街でもお金がないと宿には泊まれないらしい。

 いや別に亜人差別がないだけで優遇されてるわけじゃないから当然かもしれない。

 優遇されてたとしても中々厳しそうだけど。


「ウロスさん、どうしましょう……」


 とりあえず宿屋に入ってみた後に金がない事に気づき、しっかりと恥をかいてしまった。これからどうしようか。

 家を持ってる訳じゃないので、お金がないと何もできない。

 当てもなく通りを歩く。

 本当に良かった、彼女がいて。一人は心細いもの。


「ん……私、は……このまま、でも……」


「なるほど……」


 そう言われると、それでいい気もしてきた。一人じゃないし、怖いこともないし。

 それに人から向けられる視線も別に嫌なものじゃないし、なんならちょっと慣れてきたところだし。

 差別はなくとも、自分たちはちゃんと目立つらしい。


「じゃあこのまま、歩きましょうか」


「ん……」


 ウロスさんと二人、夜の街を闊歩する。

 感情を顔に出すタイプではないようなのだが、今はつまらなくないだろうか。そこが不安だったりする。

 だって独りは寂しいし、彼女がいなくなったら今後同じ秘密を抱えた仲間には出会えないだろうから。

 まあでも、あの森の中でじっとしてるよりはきっと楽しいはずだ。

 嫌なら多分、一人で帰るような自由人だろうし。


「……」


 こうして黙々と歩いていると、色んな声が聞こえてくる。

 街並みを眺めながらただ歩くだけでもなかなか面白いのだが、人の会話にちょっと耳を傾けてみるとさらに楽しい。色んな人生が聞こえてくるのだ。

 なので今、人間の聴力を超越した自分の耳で他人の話を拝聴していたのだが、その中で気になる話題があった。

 曰く、邪竜の魔力反応が観測されたとかなんとか。

 そして黒の森の巨竜も動き出したとか。


「なんか、自分たちのこと、噂になってるかもしれないですね……」


「そう、なの……?」


 これは多分、というかほぼ絶対に自分たち二人のことだろう。

 魔力だだ漏れで動いていたのでしょうがない。

 位置を特定されるのはちょっと嫌だが、己が住人だとしたら理解できるのでこれも仕方がないか。

 近くに災害を引き起こせるやべえ奴がいたら、退治が難しいとなれば監視するしかないだろう。

 そして、これだけだったらまだ良かったのだが、この噂には続きがあった。

 またその周辺で、一瞬ではあるが魔王の魔力反応も観測されたとか。

 現在はどれも消息不明だが、これらのことから魔王が邪竜の封印を解いて復活させたんじゃないか。竜とともに人間に戦争を仕掛ける気じゃないか。

 最終的にはそんな内容に落ち着いていた。

 ……魔王。


「あ、謝らないとだ……」


 これ多分あの謎の平穏大好き男のことだ。

 名前も知らない彼だが、どうやら魔王らしい。

 強さもうまく測れなかったし、ウロスさんと一瞬バチバチになったし、そう言われても全然信じられる。

 ていうか、やはり魔王とかいるんだなこの世界。となると恐らく勇者もいる。

 少し楽しくなってきた。

 が、今大事なのはそこではない。問題は、自分らのせいで彼の居場所が人間社会に伝わってしまったことである。

 恐らくあの殺気を放ってきたとこ辺りを観測されたのだろう。

 訳あって力をなんたらと言ってたけど、人間に見つからないためだったのかもしれない。


「……」


 次会ったらまたあの低音で罵られる。会いたくないな。

 いや向こうからは絡んでこないか。

 まあ兎にも角にもあれだ、この街からは離れた方がいい。

 でもどこへ行けばいいのだろう。きっと噂を耳にしたらミルフさんも怪しんでくるだろうし、頼れる人がいない。

 ウロスさんは居てくれるだけで助かってるけど、頼れるか頼れないかで言ったら、こういう時は頼れない。


「っ、え? あの……!?」


 突然ウロスさんがこちらに手を伸ばしてきた。あれよあれよという間に、彼女にお姫様抱っこされる形。翼が邪魔してだいぶ窮屈な状態である。

 そういえばさっき、こういうカップルが通り過ぎていった。

 真似したくなってしまったんだろうか。

 頼れない云々を口に出してしまったんだろうかと一瞬焦ってしまった。


「どんな、感じ……?」


「え、と……恥ずかしい、感じです」


 そう言っても気にした様子はなく、彼女はそのまま進んでいく。気が済むまで続きそうである。

 向けられる視線も増えた気がする。

 でもまあ良いか。

 少し恥ずかしいけど楽といえば楽だし。彼女、なんかちょっと楽しそうだし。

 このまま街を回ってみよう。

 何がとは言わないが、ガッツリ当たっていることも気にしないでおこう。

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