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皮骨堂怪異譚  作者: 狩間流
5/5

雲の写真~雲~

昔から


空を見る事が好きだった


青い空、曇りの空、雨の空、星と月の空


その時々に空は色々な顔を見せてくれる




ある日、気が付いた


雲が空に浮いていた


それは、当たり前の光景なのだが


同じ形で同じ場所に、その雲はあった


いつからあったかも忘れるくらいに、それは当たり前にそこにある



その雲の事について話せば、誰しもが奇妙な顔をする


私にだけ見える、不思議な雲


その雲の存在が日常になり、気にも留めなくなった頃




空を見上げている人がいた


その目は、あの雲をじっと見ている




私が立ち止まると、その人と目が合った


軽く会釈をし


「君は、あの雲が見えているかい?」


と問いかけてきた




正直嬉しかった


自分以外にも、あの雲が見えている人がいる事に


話したいことが沢山あった


しかし、その願いは叶わなかった


「はい」と、私が答えると



「じゃあ、次は君の番だね」



と言い残し、その人は徐々に消えてゆく


消えるというより、霧の様に存在が薄くなり


その小さくなった人の粒は


風に乗って、あの雲の方へと流れていった




以来、その言葉が頭に残る


あの雲を見ない様、下を向いた生活をして、どれくらい経っただろう



私も、あの人の様に霧になって雲になってしまうのか



不安と恐怖が渦巻く中で、突然肩を叩かれる


俯きながら振り返ると


誰もいない


恐る恐る顔を上げる


天気予報では雲一つない青空が広がるとのことだった



なのに



私の目の前には、あの雲がいた


雲からあの人が私の肩に手を伸ばしていた

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