二組の機械~君は恋人と空想を見るか~
「この機械は空想を見せる機械
ん?夢じゃないかって?
夢は自分で自由に見ることは出来ないでしょう?
空想は自分自身で思ったこと
それを見せる機械
さて、君は・・・・
いや、君達はこれを使ってみるかい?
そうか、じゃあ、こっちへおいで」
こうして私たちは
空想を体験する機械を使うことになった
気が付けば、一人で廃墟の中にいた
正面には見覚えのある機械や先程まで座っていた椅子があったが
どれも古く錆や埃がたまっており、何年何十年と経過したような状態である
これが空想?
自分が考えていた空想とかけ離れた内容である
やれやれと立ち上がろうとした
ぐちゃりと潰れたような音
足元を見ると、あるはずの自分の足が無い
正確に言えば、溶けてドロドロになっている
気が付けば、手も体も顔も全て溶け落ちている
あまりの出来事に声を上げようとするが、喉も溶けており
声帯としての機能をはたしていない
わけが分からず、部屋の外へと出てみると
突然棒のようなもので叩かれる
強い痛み
まるで神経に直接触れられたかのような痛みが何度も襲う
何度も何度も何度も何度も
意識が遠のく前に振り向くと
頭の無い人間が、私の頭に金属バットを振り下ろした
気が付けば、また、部屋にいた
身体は同じ溶けた状態だ
扉に聞き耳を立てる
人の歩く音が聞こえる
私は恐怖のまま、じっとその音が聞こえなくなるのを待った
足音が扉の前で止まった
私は急いで部屋の中の隠れる場所を探したが
扉の開く音がしたと思うと後ろから
神経を焼かれるような痛みが走り、体が炎で燃えている
また、あの頭の無い人間だ
私は炎に焼かれ溶かされていった
そして
何度も、何度も、何度も
私は死を繰り返している
どんなことも出来ない
ただ、あの死が来るのを待つしかない
何をしても逃げられない
何をしても終わらない
地獄の様な痛みと死の繰り返しの中
恋人は大丈夫なのだろうかと頭を過る
・・・・
私の空想を思い出す
初めて自分の体を見た
溶けかけた体は半透明になっている
私の体の中には溶けかけの「恋人」の頭が浮かんでいた
・・・・・
一瞬、視界が明るい天井を映し出す
最初に説明していた白衣を着た人物が椅子に座り、コーヒーを飲みながら
私が目覚めた事に気付くと
「まだ、終わっていませんよ?」
身体が動かない
「お隣の恋人さんの空想が終わっていませんし、もちろん君の空想も終わっていません」
そう言われて、同じように頭が装置に繋がれた恋人を見る
ありえない
「ん?ああ、恋人さんが空想することがありえないと思ってらっしゃる」
少し笑うとモニターを見ながら最後にこう言った
「だって、脳に残っているのですから、空想が
『私を殺した奴を徹底的に永遠に殺し続けたい』とね
空想の時間は無限です。
お二方共、永遠にと願ったのですから、もう覚めることは無いでしょう
それでは、空想の世界を楽しんで下さい」
こうして、私は未だに空想の中で、恋人と永遠に一緒にいる