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プロローグ
初めまして。
初投稿となります。
不慣れな点やお見苦しい点などあるかと思いますがよろしくお願いいたします。
少年アイリスの物語。
ゆっくりお付き合いください。
かつて聖域と呼ばれた深き山の中腹に誰にも知られることなく立つ、半ば朽ちかけた古ぼけた石碑。
表面に刻まれた文字はもうほとんど読み取れないほどに風化し、わずかにアイレイと読める。
それは古き時代。
神話王とまで呼ばれた王の名。
歴史にも伝説にも欠片も残さず消えた1人の王。
王が存在した証は、この朽ちかけた石碑のみ。
否、おとぎ話に謡われる死者王とよばれた魔王こそ神話王。
誰も語らず誰も知らない王の物語。
時の彼方。
街道を歩く瘦せ衰えた少女にも見える少年。
その小さな背には、死が影のように張り付いている。
如何なる運命を経たのか、少年には2柱の悪魔が寄り添い、共に歩き続ける。
少年の生は戦いと死の輪廻。
だがその歩みは、眩いほどに光輝き、虐げられていた弱者の希望となる。
神話王と呼ばれた少年は、なぜ魔王と、死者王とまで蔑まれたのか。
少年は歴史に名を残さなかったが……世界を残した。