監獄
28日の21時に途中の文書を投稿してしまいました。
こちらが完成版です。
「ねえ、ねえってば!起きて!」
肩を強く揺さぶられる感覚に目を覚まし、上半身を起こす。
後頭部にスキズキとした痛みがはしって頭を抱える。
「いてて・・・。」
「良かったぁ。」
安堵した表情のゆうりに思いっきりハグされる。
そうだ。奴はどこだ。あいつに近づいた後、俺は気を失って・・・。
ゆうりを軽く押しのけて、周囲を見渡す。唖然としてしまう。
今、自分たちがいる場所が監獄の中だということに気が付いて息をのんだ。
研究所内が見えるのは鉄柵からだけで、それ以外は壁に囲まれている。
「まもるが倒れてから、すぐに私も同じようにされて気が付いたらここに。」
俯きがちに彼女はそう呟いた。
未知の領域で未知の敵に対してうかつに行動に出るべきではなかった。その結果がこれだ。感情的になりすぎだったと自分を戒める。
しかし、ここで止まっていることはできない。すぐに出ることができないか、鉄柵を押し引きしてみるがびくともしない。もちろんそうなると思っていたが、藁にも縋る気持ちだった。心配そうにみつめるゆうりを横目に、その他も調べるが壁は堅いということだけしかわからなかった。
怒りに任せ壁に殴りかかる。
「くそっ!どこか出口は!!」
壁にぶつけた拳が痛むがそんなことを気にしている暇はなかった。
早く出なければどうにかしなければ。そんな思考が脳裏をめぐって考えがまとまらない。
「怖いよ・・。」
ゆうりが呟くのを聞き、我に返る。
「すまなかった。ちょっとパニックになっていた。」
急に閉じ込められて混乱してしまっていた。自分の気を落ち着かせるために深呼吸をする。
現状、できることがないからゆうりと話した方がいいかもしれない。
情報収集した方が良いかもしれない。
ゆうりの対面にあぐらをかいて座り、さっきみた謎の人物について聞くことにした。
「さっきの謎の人物、ゆうりは知ってるか?」
「おぼろげにだけど、知ってる気がする。たぶんガラス越しとかに見てたと思う。それ以外は、全然思い出せない。」
「あいつが何なのかはまだ分からない。この研究所について何か分かるか?」
「私が分かるのは一部の通路と部屋だけ…。しかも、数年前だからあまりあてにならないと思う。ごめん、助けになれなくて・・・。」
悲しそうな顔をして言う彼女に申し訳なくなってくる。今やれることはもうないかもしれない。
何かないかと考えるが行き詰まる。
「ねえ、少し昔話でもしようよ。」
突然、彼女がそう言ってくる。
特にできることは無かったため、話に花を咲かせることにした。




