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果てのない世界で選んだ選択肢  作者: よしたろう
新たな出会い
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見知らぬ場所

そこには何も無かった。

気味の悪い音も聞こえなくなった。違和感を感じ、周りを見渡すと知らない場所に来ていた。

ファンタジーに出てくる家に似ている建物が立ち並んでいる。


「此処は何処だ?こんな場所見たことも聞いたこともない。いつの間にこんな場所にきたんだ…。そこまで遠くまでは来てないはずだ。」


混乱からか自問自答をしていた。

そのことに気づいて、冷静になるために深呼吸を繰り返した。幻覚を見ている可能性、謎の音の正体、激しい目眩、たくさんの情報がぐるぐると頭の中を回っていく。

そこでようやく、消失の話や行方不明の話を思い出す。

そこから、自分がその立場になっている事に気づくまで数秒もかからなかった。


「混乱していると思ったより、頭がまわらないな。」


不安と混乱で独り言が増えていたが、その事を気に留めるものはいない。



立ち止まって考えていても仕方ないと思い、街を探索し始める。

一軒家のような建物がぎっしり敷き詰まっている。家と家との隙間が僅かで、空もまだ薄暗いために隙間の先ははっきり見通すことはできないが、奥にも家があることぐらいは分かった。

逆に一軒家のような家しかなく、それも似たような構造のものばかりだ。不自然さを感じた一番の要因は、普通の街にあるはずの食品店や衣服店が一つもないということだ。

そのうえ、奇妙なのは家がたくさんあるのにも関わらず、人が住んでいた痕跡が見つからないことだった。


とりあえず、一つの家にお邪魔させてもらったが、家具やインテリアはあるものの、衣服や小物などといった物がどこにもなかった。さらに、かなり手入れされていないようで埃が溜まっていて、足を踏み出すたびに埃が舞い散る。

埃のにおいでむせて、不快な気分になるがそれを気にする余裕はない。次々と調べ続けた。



しばらく探索していると家のキッチンの引き出しの中に缶詰めのような食べ物と密封保存されている食料を見つけることができた。大量には無かったが、一日分くらいはあると推測できる。そのあと、他の家のキッチンも確認すると同じくらいの量があり、食料に困ることはないと安堵した。

しかし、少し安堵したせいで目を背け続けていたことに焦点が当たる。その不安について考え始めてしまい、ますます不安になる。


「消失した行方不明者は、未だに発見できていない…か…。」


声が漏れる。

そうだ、行方不明者は誰一人帰ってくることはなかった。8年という年月が経っても…。

記憶の隅に隠しておいた記憶が戻ってくるが、その記憶を振り払う。

今向けるべきは、過去よりも現在だ。そう自分に言い聞かせて、再び探索に戻る。



いくつかの家をまわり、そろそろ探索も打ち止めにしようと思いながら、一つの家に入ろうと近づくと自分が入る前に埃が舞っているのに気付いた。

時刻が昼にさしかかっているのもあり、家の中も随分明るかったからだ。

心拍数が一気に上がり、汗が止まらない。

その正体を確かめるべく、ゆっくりと音をたてないように家の中に入る。


一つ一つの部屋を確かめながら進むが、埃が舞っている事以外は他の家と変わらないように思えた。

最後にキッチンを覗いた時、他の家では食料が入っているはずの引き出しが開いていた。

恐る恐る中を確認すると、案の定何も入っていなかった。

おそらく、誰かが持ち出したのだろう。だが、この街へ来てから、誰とも遭遇していない。

いや、誰もいないと無意識に決めつけていた。

すぐに家の中に誰もいないことを確認すると、足早に家から出た。

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