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果てのない世界で選んだ選択肢  作者: よしたろう
旅立ち
24/52

騒々しい朝

外が明るくなってきたのが見えると横で寝ているゆづきを起こさないようにベッドから出る。

寝返りをうってのしかかってくる彼女を身体を捻じらせ避けるのに精いっぱいだった。何かあったかと誤解されるのは御免だ。


「はぁ、全然眠れなかった。」


ポツリと呟き、あくびをしながら身だしなみを整える。

ドンドンと荒いノックとともに声が玄関から聞こえる。


「おい!まだ寝てんのか?」


この声は聞き覚えがある、昨日マーケットを警備していたつり目の男だ。近衛とか言ったか。

面倒なことになりそうだとは思いながらも玄関の扉を開ける。


「ったく、ガキはまだ寝てんのか?」


「それで、用件は一体何なんだ。」


「早くガキを起こしてこい。話はそれからだ。」


こいつには会話が通じないと悟り、仕方なくゆづきを起こしに寝室に戻る。

まだ、すやすやと寝ている。不本意だが肩を揺さぶって起こす。


「うぅん?どうしたの?」


寝ぼけた様子で尋ねられたが、俺も状況がはっきりとわかっていなかった。とりあえず、近衛という男が来たことを伝える。

すると、彼女はすぐに表情を変えて何か警戒するような面持ちになった。そして、ベットからすっと立ち上がって、荷物の入ったバッグを漁りはじめた。


「すぐ準備するから、待ってて。」


それだけ言われて、寝室から追い出された。

玄関からは催促する声が聞こえる。鬱陶しいとは思いつつ玄関で待つことにした。

腕を組み、イライラとした様子の近衛に睨まれたがそれを無視して何かあったのか考える。

昨日、ゆづきは一悶着あったと言っていた。何か危ないことでもあったのか。

先ほどの寝室から、ゆづきが出てきた。

その様子を見ると近衛はついてくるように言った。

何の用かも分からず、不安があるが今はついていくしかない。




ついて行った先は集会場という場所だった。30人は入れそうなホールで多くの椅子とテーブルがあり、そこの1つの丸いテーブルを囲んで言い争っているのは源内と無精ひげをはやした細身の男だ。

その男は源内と同じくらいの年齢のように見えるが、態度は近衛よりも悪い。

それに対して、源内の方が落ち着いている。

無精ひげは口から唾が出る勢いで源内にまくしたてる。


「源内、てめえ。これ以上面倒ごとを増やすんじゃねえ!」


「まぁ落ち着け、島田。客人も来たところだ。」


近衛に連れられて来た俺とゆづきに視線が集まる。


「で、用件通り連れてきましたよ。」


近衛がさっきの態度は何だったのかと言わんばかりの態度で源内と島田という男に話す。


「はぁ、よくものうのうとこの場所に来たな。褐色。」


椅子から立ち上がり、ズカズカと足音をたてて近づいてきた。

その瞳はゆづきに向けられていた。俺など眼中にはないようだ。

ゆづきを横目に見るが言い返そうともせず、島田という男を睨んでいるだけだ。


その男は十分に近づくと突然ゆづきの胸ぐらを掴みかかる。

少し持ち上げられて、彼女は苦しそうにしている。

それを見て咄嗟に、俺はその男の手をゆづきから引きはがす。そして、ゆづきと男の間に体を割り込ませる。その男はじろりとこちらを睨みつけてくる。その強烈な目力にひるみそうになる。


「あぁ?てめぇ何しやがる?」


「島田、そこまでにしておけ。」


源内の冷静な声が島田という男の後ろから聞こえた。


「揉めるのは後にしろ。もうすぐ長がくる。」


「チッ・・・。」


目の前にいた男が踵をかえして元の場所に戻る。

ゆづきは少し咳き込んでいる。この男、一発殴りたいと思った。


「お前も何か事情があってマーケットにきたんだろうが、追い出されたくなけりゃ面倒ごとを起こすな。」


源内からそう言われる。

近衛は少し畏まっているようすで源内と島田のもとへ行き、座った。このマーケットの長が来るらしい。

こんな奴らをまとめ上げているのはどんな人物なのか興味がある。

集会所に向かってくる足音の方向に目を向けた。

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