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花のない春が来る 承

一日に三本出せるとか、今日は凄い日ですね。では、どうぞ!

「……貴方という人は、自覚を持った行動をしてください。」

「……っち、うるせえな!」

「叫ばない。うるさいです。」

「……ふんっ、」

大人しく手当を受けている都希は新たに出来た傷の理由を決してはなそうとはしなかった。

毎回そうだ。

週に二、三回の頻度で傷を作ってくるこの男は、それでも、ここにやってくる。

家か何かと勘違いしているのだろうか。

ここの医療品は生徒会費でまかなっているので、出来れば一人のために使いたくは無いのだが。

「おや、仲良くやってるねぇ。どう?都希君、勝てた?」

「分かってて言ってるだろ。…………負けたよ。」

「やっぱり?今度、空手教える?」

「いらねえよ!」

珍しくちゃんと書類を纏めてくれていた会長が、横槍を入れてるくる。

なんで、こう火に油を注ぐようなことを言うのだろうか。

良い性格している。

「しっかし、沙也華ちゃん手当上手だねぇ。」

「ええ、まあ。弟いますし、看護師志望なので、」

「へぇ~。僕、医者志望なのに手当とかしたこと無い。」

「そんなんで医者なんか慣れるのかよ。」

「大学の医学部に推薦もらった。」

「……っち、」

この人は、頭良いのになぁ。

どこかはずれてるよな。

「そんな素晴らしい生徒会長さんが、俺なんかに後継がせるとかせてどういうつもりだよ。」

「え~。人を見る目はあるつもりだよ。彼女をここに招いたのも僕だし。」

確かに。

私がここ生徒会に入ったのは、入学式の次の日、廊下で声をかけられたからだ。

閑話休題

この人を次代生徒会長に推薦するというのは、私も理解しかねた。

と言うか、前生徒会長が推薦者を残した場合、殆どの場合その者が生徒会長となる。

特にそのカリスマ性で生徒から絶大な人気がある会長の推薦ならなおさらだ。

だからこそ、何を考えているのか解らない。

「それは、私も聞きたいです。私だって、次期生徒会長へ立候補することは視野に入れていました。なのに急に…」

「うん。そうだよね。沙也華ちゃん生徒会の仕事誰より頑張ってるし、今生徒会で一番生徒会長に相応しいのは間違いなく君だろう。」

「なら……」

「でも、彼は君を凌駕すらすると思う。」

「はぁ!?俺がこの真面目女より生徒会長とかって言うお偉いさんに会っているってのかよ。」

「うん。」

おいこいつ大丈夫か、と彼が私に話し掛けてくる。

私も同じ気持ちだ。でも、二年間この人のもとで生徒会をしてきて分かることがある。

この人がそうだと言ったらそうなのだ。

それは確定事項のように、必然的に言ったとおりになる。

まるで、未来予知でも出来るように。

「いいじゃ無いか。都希君は面白いし。君、頭も悪くないだろ。前回のテスト、学年五位だったっけ?」

私は一位でしたよ。

それでも、彼の方が良いと?

勿論、成績がすべてではない。と言うか、成績で量れる事には限りがあるし、頭が良いから仕事が出来るとは限らない。

でも、彼は言うなら問題児。校則を尊重し、校風を守り、伝統をつなぐ立場にある私達が、積極的に問題を起こすようなことがあってはならない。

それを分かった上で、推薦しているのだろうか。

……息すらし辛い沈黙が流れる。

ガタッと、音を鳴らして都希が椅子から立ち上がる。

あっ、と、声が漏れると、こちらをチラリと見た。

まだ、手当の途中だったのだが。

「やってられっかよ。」

「帰るのかい?」

「知らん。」

音をたてて扉を開くと、そのまま閉めずに出ていった。

仕方なく、私が閉める。

やれやれと、会長は肩をすくめた。



オレンジ色の照明が料理を少しだけ色よく見せてくれた。

とはいえ、そんなに料理が上手じゃ無い私の作れるのは、これだけだが。

「わぁ~お姉ちゃん。今日は肉じゃがだぁ~。」

「うん。ちゃんと座って食べてね。」

「いっただっきまぁ~す!」

元気に手を合わせる弟に自然と笑みがこぼれる。

両親が共働きで、2人しかいない食卓でも、この子は喜んでくれる。

それが姉としては喜ばしい限りだった。

「ちゃんと残さず食べるんだよ。」

「うん。」

口元にご飯粒を付けながら口をもぐもぐと動かしている。

私とは七歳の年の差があるこの子はまだ小学生。

とはいえ、周りの子よりも幼く見える天然、と言うか、おおらかというか、とにかく、先輩とはまた違う意味で抜けた子だった。

そんな弟が可愛くて仕方なかった。

「あっ!」

「どうしたの?」

突然大きな声を出す。

食事中はテレビを消しているうちでは、その声は大きく響いた。

「これ……」

「ああ、」

弟はお皿の端を指す。

ピーマンだ。

「ピーマンだよ。ちゃんと食べて。」

「あ、僕、ピーマン昨日も食べたから、姉ちゃんにあげる。」

「だめよ。ピーマンにはビタミンAおよびCが多く含まれていて、ビタミンAは皮膚、粘膜、目の健康に必要不可欠。Cは皮膚や血管の老化を防ぐ作用がある。特にビタミンCは水溶性ビタミンって言って、体内で溜めておくことが出来ないから、ちゃんと食べなくちゃだめ。」

「何言ってるか分からないよ!」

「ん。」

箸でピーマンをつまんで、弟の口元に運ぶ。

首を逸らす弟。

「ま、待って、姉ちゃん。じゃあ、ビタミンAが含まれてるものって他に何があるの?ビタミンCは?」

「は?」

ふと、考える。

「えっと、確か。ビタミンAが一番含まれてるのはにわとりの肝臓?レチノール活性当量的にはほしのりも多い。ビタミンCはアセロラ。と、焼き海苔?」

「じゃあ、海苔、海苔食べるから。ピーマンは許して。」

「ふむ…………。」

少し考えた。

確かに……合理的?

「いや、やっぱりだめ。ちゃんと食べて。」

「う………やっぱり?」

眉間に皺を寄せて恐る恐る口に入れる。

二、三回噛むとそのまま飲み込んだ。

その表情を見て………

はっとした。

この顔だ。

あのがさつな男を初めて見たときの既視感は、これだ。

私はあいつを幼く、ガキのように見ていたのだ。

そう、弟のように。

では、今日感じたあの気持ちは……

きっと怪我して帰ってきた弟を心配する気持ちだったんだ。

あのモヤモヤは……

きっとそうに違いない。




***

こんにちは。まりりあです。

以上。まりりあでした。

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