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花のない春が来る 起

二度目の青春も君と共に

の、番外編です。

今回はちゃんとラブコメですよ!



これは、『二度目の青春も君とともに』の番外編となります。

こっちはちゃ~んと、ラブコメですからね!



その男がやってきたのは、クソ忙しい秋の学園祭を終えた後、受験のため、先輩達が部活や生徒会活動から手を引く準備を始める頃だった。

それでもこの生徒会というのは学園祭の終わった余韻に浸る時間もなく、次年度のため、さらにはいつかの生徒会のために資料をまとめ、整理し、記録する必要があった。

適当でいいと会長はおっしゃるが、それは私の理念から外れ、は理解できないものだった。

資料はきっちりまとめられ、漏れなく見やすいからこそ有る理由となる。それが適当でなんの記録も残さないものだったら、その存在理由は無い。

なんなら、これから訪れる厳しい冬の暖房代節約のために一斗缶の中で燃やして、生徒会室にでも置くのがいい。

そうはなって欲しくないので、きっちり書く。

勿論。そんなのに付き合う人間はいないので、暗くなった室内に残るは私くらいだが、

それでも、唇をかみ締めて、一人残っていた。

青春を楽しむ気なんてミリも無い。

ただ、この生徒会という場である程度の評価をいただき、経験をし、将来に何らかの形で関わることがあればいい。

そうあれば嬉しいものだ。

そう思い、必死で資料作成をしていた私の集中力を勢いよく開け放たれた扉が壁にぶつかる音が途切れさせた。

「お、あれぇ?まだいたの沙也華ちゃん。」

「か、会長?」

「っ、放せよ!あんたに関係ないだろ!」

「ごめんね、沙也華ちゃん。ちょっと騒がしくなるよ。お客さんだ。」

「は、はい?」

「誰が客だ!早く帰らせろ!ん、んん!んんん!!」

「うるさいよ、宮島都希くん。生徒会室では静かにね。」

制服を着崩した男子生徒を引きずるように連れてきた会長は、わめき散らすその生徒の口にハンカチを突っ込み猿轡とする。

………あれ……これは、いじめになりかねませんね。

生徒会長は男子生徒をパイプイスに座らせると、バタバタとする手足を体育祭で使うハチマキで縛り付け、括り付けていく。

私はただそれを見ていただけだった。

「ふぅ~。もう、暴れないでよね。僕、柔道と空手は二段までしか持ってないんだから。」

「ん、んんん!!んん!」

「はいはい、痛いね。沙也華ちゃん、救急箱あったっけ?」

「え、あ、はい。」

状況をいまいち飲み込めないまま、棚から救急箱を取り出す。

会長に差し出すと、不思議そうに首をかしげてくる。

………やれって事ですか?

仕方なく、暴れる生徒の前にしゃがみ込む。

靴のリボンの色から同学年の生徒らしい。

全く、もう直ぐ最高学年になるという自覚は無いのかしら。

制服の隙間から赤や青のアザ、さらには血が見える。

絶句した。

近くで見ると思ったより重症だ。

「な、何があったんですか。」

「ん~?喧嘩だよ。」

「はぁ?」

「ん、んん!!んんふ!」

「はいはい、手当てするから動かないの。」

いや、手当てするの私ですけどね。

仕方なく、暴れ続ける男子生徒の腕を掴むと、服を捲る。

掴んだところの力を抜いてくれたところ、根っからの悪い奴では無いのかも知れない。

手当てすると分かると、暴れるのも止めてくれたし。

……だったら最初から暴れるなよ、とは、口に出せないが。

ティッシュで血を拭い、ガーゼを当てて傷口に消毒液をかける。

染みるのか眉をしかめている。

なんだか、既視感のある顔だった。


一通り手当を終え、立ち上がる。

それを悟ったように会長が近づいてくる。

「さて、少年。もう暴れないって約束できるかい?」

「…………ふん。」

「おやおや、嫌われてしまったかな。」

「んん。」

そりゃ、嫌われるでしょうね。と思いながら、救急箱を棚に戻す。

会長は、猿轡として口に噛ませていたハンカチを取り外すと、そのままそれをゴミ箱に投げ捨てた。

「ったく……なんなんだよ!こんなところに急に連れてきやがって!」

「君さ、裏路地に落ちてただろ?って言うか、喧嘩して負けてた?」

「………だから?」

「いっやぁ~、ずっと見てたんだけど、いい負けっぷりでさぁ!」

帽子を被り直しながら会長は、笑う。

……う~ん。なんというか、残念な人間だよな。この人。きっちり制服着るとことか、今や誰も被らない制帽きちんと被るところとか、きっちりしてるのに、性格に難ありってところだ。

なめるように言われた相手の方も、相当イラついたみたいだ。

「っ、てめぇ、なめてんのか!」

「なめてないよぉ~。」

今時珍しい脅し文句だな。

それすらものらりくらりと躱す会長は流石というか、人の逆鱗に触れるのが上手いというか。

「あの………どうしてお連れしたのですか?」

「嗚呼、彼を生徒会の一員に入れようと思ってね。いや、来年の生徒会長として推薦しようと思ってね。と言うわけで、教育よろしく!次期副生徒会長さん!」

「「はあ?!」」

こればかりは、彼と完全同意だった。

なにそれ……




***

こんにちは。まりりあです。

柔道とか、空手とか、級とか段とか分かんないですけど、二段って凄いよね!きっと。

制帽っていうのは、軍帽みたいな鍔の固い素材で出来ている角張った帽子のことですね。想像できなかったら調べてみてくださいね。

副会長ちゃんの名前は、藤原沙也華ちゃんです。今、苗字は考えました。

起承転結と続くので。おたのしみに。

それでは、またの機会に。

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