シンデレラ (もう一つの昔話38)
今夜はお城で舞踏会。
町の娘たちはおしゃれをし、はなやかなドレスをまとってお城に向かいました。
シンデレラの姉さん二人も、せいいっぱいのおしゃれをして出かけていきました。
――わたしも舞踏会に行きたいな。
シンデレラの目に涙。
でも、ドレスがないので行かれません。
そんなとき。
妖精のおばあさんがあらわれました。
「きれいにしてあげるから、おまえもお城に行っておどっておいで」
おばあさんが魔法のツエをひとふりします。
するとなんと、カボチャは馬車に、ネズミは馬に変わりました。
「でも、こんな服じゃ……」
シンデレラは灰まみれの服と靴を見ました。
「それもきれいにしてあげるよ」
おばあさんがツエをふります。
灰だらけの服はステキなドレスに、すりへった靴はきれいなガラスの靴になりました。
「さあ、早くお行き。魔法のききめは十二時までだからね」
「ありがとう、おばあさん」
カボチャの馬車に乗って、シンデレラは王子様のいるお城へと向かいました。
舞踏会が始まります。
シンデレラの美しさに目をうばわれた、王子様。すぐにおどりを申しこみました。
「はい、よろこんで」
シンデレラは王子様とおどりました。
夢のような時間はまたたくまに過ぎてゆき、やがて十二時を告げる鐘が鳴り始めます。
――たいへん、魔法がとけちゃう!
シンデレラはあわてて舞踏会場を飛び出しました。
靴がぬげましたがかまっちゃいられません。
鐘が鳴り終わりました。
すると馬車はカボチャに、馬はネズミに、そしてシンデレラはもとの灰まみれ。
家に帰ったシンデレラは、イスにどたりと座りこみました。
「もう、おなかペコペコよ」
「そんなにおどったのかい」
おばあさんがあきれた顔をします。
「だって、楽しかったんだもの。ねえ、なにか食べるものはないかしら?」
「しかたのない子だねえ」
おばあさんがツエをふりますと、カボチャはパンプキンパイに、ネズミはステーキになりました。
「なんて、おいしいのかしら」
シンデレラはパンプキンパイとステーキをすっかりたいらげました。
それからのシンデレラ。
朝、昼、夜と、かかさずパンプキンパイとネズミのステーキを食べ続けました。
ひと月後。
シンデレラのもとへ、王子様がガラスの靴を持ってやってきました。
その王子様。
――ここにはいないな。
シンデレラをチラッと見ただけで、すぐに帰っていきました。
悲しい目をして王子を見送る、むっちり太った足のシンデレラでした。