西と東の森
昔々、ある森に立派な虹がかかりました。
その虹は逆さまで、珍しい虹がかかったその森はいつしか「逆さ虹の森」と呼ばれるようになりました。
その逆さまの虹の森は森の真ん中に大きな川があり、逆さまの虹はそこにかかり動物達は虹を渡り行き来していました。
ですが、ある年嵐で森の食べ物が少なくなると食べものが多い西側と東側で喧嘩が起き、東と西での行き来は無くなりました。
東西とも川の向こうには恐ろしい動物がいて、川を渡ったものは誰も生きて帰れないという噂が広がり、川には近づくなということを大人は子供に言い聞かせ、仲直りすることなく何年も何年も過ぎていきました。
そして、逆さ虹もいつの間にか消えてしまっていました。
逆さ虹の森の西側に住むキツネ君は友達のリス君と毎日木の実を取ったり木に登ったりして楽しく遊んでいました。
今日は丘の一本杉に上りました。
木の上から見ると逆さ虹の森が一望できます。
森の中央には深い渓谷がありその中を川が流れています。
しかし、その川の上流は渓谷ではなく、岩のゴロゴロした場所で川幅も狭く反対側に行くことができそうにみえます。
「ねえ、リス君川の向こう側にもたくさんの木の実がなってるよね。」
「そうだね。でも川の向こうどころか川に近づくと怒られるよ。」
「そうなんだよね。なんでかな。」
「じゃあ、明日川の上流の方から向こう側の森にいって調べてみよう。」
「え。今リス君が言った通り怒られるからダメだよ。」
「ちょっとのぞくだけだしきっと大丈夫だよ。それに言わなければ誰にも分らないから。」
「そうかな。」
「そうだよ。昨日キツネ君が落ちた落とし穴みたいに。」
「あれリス君がほった落とし穴だったの。」
「そうだよ。」
「もしかして一昨日木の実がいきなり頭の上に落ちてきたのも、もしかして…。」
リス君は顔をそらし
「るるるー。」
「リス君。」
「キツネ君ごめん。怒った?」
キツネ君は溜息を一つついて、
「怒ってないよ。でももうやめてよね。」
「うん。もうしないよ。」
と何度目かわからない約束をしてくれた。
こんなことをいつもしているのに比べたら悪いことではないように思えた。
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