第十六話
その時点ユウマの予想通りの展開であり、念の為に手紙を読まずに、処置を行なったハーフ亜人の娘達へ余計な行為をしない様に、ベッドルームの方へ行けない様にシールド魔法を張り巡らせている。
まあ封筒の入った封を切り中の手紙を読むか解除魔法を使用すれば・・・ベッドルームに張ったシールド魔法は簡単には解除されるが、現状メグミさんには解除が出来ないシールド魔法である。
「何?これ・・・あの娘達の元に行けない?これってユウ君の仕業だよね。どうしよう?」
それでメグミは自分の居る場所の把握は出来たのだが、ユウマ達の姿が見えないのでハーフ亜人の娘達が寝かされたベッドが見えたので、そちらの様子を見に行こうとその場を離れ、彼女達がいるベッドルームの方に足を運んだが、何故かそのベッドルームの部屋に入れない事に気付き、ユウマが何かをしたであろうと言う雰囲気だけは感じとっていた。
「もう、ホントにユウ君とミーアちゃんは、どこに行ったのかしら?」
とりあえずはメグミはハーフ亜人の娘達の事は気になったが、ユウマ達を探す事に思考を切り替えた。
案の定メグミは、ユウマが準備していた手紙の事と蘇生薬の事を忘れていたのである。そんな事とは知らず当たり前に動けるミーアが、メグミの居る建物の中に入って行った。
「メグミお姉ちゃん!・・・あれ?いない・・・手紙の入っている封書もそのままだし、薬品の入った魔法袋もそのまま?お姉ちゃんどこにいったのかな?」
ミーアは時の止まったユウマを残したまま、念の為ユウマがお願いしていた事をメグミに伝える為に建物の中にはいった。
「・・・まさかホントにお兄ちゃんが言った事になってるなんて?普通なら私達が居なかったら最初に見ると思ったけどなぁ、メグミお姉ちゃん!・・・それよりもお姉ちゃんどこに行ったのかな?」
とりあえずミーアは、メグミを探す事を優先とした。実はミーアは念の為にユウマから別に手渡された蘇生薬の入った魔法袋とエリクサーをハーフ亜人の娘達の人数分を手渡されていたのである。
ホントの事を言えばハーフ亜人の娘達の目覚めるタイミングは決まっていたので、出来るだけ早く最後の処置を行いたいのがユウマの本音ではあった。だがしかし、予想ではメグミがユウマの渡した手紙と蘇生薬の使用法に気付くのは、まだかなり時間が掛かる事は気付いていた。
恐らく俺達が目の前から姿を消し、メグミ自身が居る場所を見たら少し混乱してしまう事まで、実のところユウマには解っていた。何故ならユウマの持つ能力の一つである未来視を行使して状況自体は解っていたからであった。
ただユウマの見た未来視には、ミーアがユウマと共に時間が停止した世界で動けるという未来だけは見えなかったが、実のところミーアが今回の件でもキーポイント、そう重要人物だったのは解っていた。
それで念の為ミーアには、時間が動き出した時の事を、時間が止まる前に説明しており再度時間が動き出す時に説明しておいたのだ。
「えっと、お兄ちゃんの話では・・・この手紙の文章を読めばメグミお姉ちゃんの居場所も解るって言ってたんだよね・・・」
ミーアはテーブルのうえに置いてある封筒の封を切り中にある手紙と作業方法の説明書を取り出し文章の方に目を通した。すると最初の方の文章にはメグミさん宛の文章で、状況の説明が書いている手順書があったが、問題は裏面に書かれている文章である。
そこに書かれていた文章は、確かにミーア宛の文章である事が解り、恐らくメグミが見ても理解しがたい事が書いてあるのだ。
それでその文章に書かれている内容は『メグミさんが外に出てハーフ亜人の娘達の天幕の場所に居るので、一緒にベッドにいる彼女達の処置を手順書どおりに行う事、それと全ての処置をメグミさんがやった事にしたいので、ミーアもその手順書とメグミさん宛の手紙を渡し、メグミさんの手伝いを頼む』と書かれていたのだ。
「結局はお兄ちゃん自分がやった事は、内緒にするんだ・・・。まあ、いいや!とりあえずメグミお姉ちゃんを見つけて連れてこないと、最後の処置とかが終らないや・・・」
そして、ミーアがユウマの残した手紙どおりの場所に行くと、メグミが周囲を見渡し何かを捜している姿を見つけたので、ミーアは声をかけて近付き、ユウマが書き示したとおりに説明して手紙を渡し、ついでにミーアからもメグミに説明したのである。
「・・・それで、結局は彼女達の奴隷紋とかの呪術も全て解除しちゃったの?ミーアちゃん!」
「うん、でもお兄ちゃんの話じゃ、最後の処置はその手順書どおりにして、メグミお姉ちゃんがした事にしてって、そうその手紙にも書いてたよ。それにみんなにいちいち説明するのが面倒臭いから、後は任せただって・・・」
ミーアは手紙に書いていた事と、ユウマ自身が言っていた事をメグミさんに事細かく説明したのである。
この時、メグミさんは物凄く呆れた顔をしていたが、とにかくユウマが出した指示通り、ハーフ亜人の娘達の処置を行って言ったのであった。
ちなみにメグミ宛に書かれた手紙には、ミーアが説明した内容と同じような事を書いていたのと、その他に『2、3日は彼女達の様子をこの場で見たのちに、マリエル様に状況と経過を見せる為に彼女達全員を神聖霊の森の中央の島にある神殿に連れて行く事、まあ問題は無いとは思うが一応は女神様に見せておいた方が彼女達も安心だと思うから・・・』と、それと『その間彼女達の面倒をメグミさんが見るようにお願いします。一応応援に何人かこちらに来て貰う様に連絡しときます。それと明日からの視察に関しては俺とミーアで行ないますのでよろしく』と記載していたのだ。
それでメグミさんとミーアは、ハーフ亜人の娘達全員の処置を全て終らせて、ミーアに関しては手紙の最後に記載してあったとおり、後の事はメグミさんに任せてユウマが待つログハウスに戻って行ったのだ。
ちょうどログハウスに戻ると、いつもより早く動ける様になった俺の姿を見てミーアはハーフ亜人の娘達の処置について説明してくれた。
「うん、お兄ちゃんの用意してくれた手順書どおり進めたら、あの娘達とお姉さん達みんなの顔色良くなったよ!まあ、ミーア居る間には目を覚まさなかったけど・・・あっ、それとメグミお姉ちゃんにも言われた通り、回復薬飲ませたからね!それと伝言で今度ちゃんと説明してだって、お兄ちゃん!」
ミーアは俺に彼女達の経過を説明してくれた後に、メグミさんからの伝言を伝えてくれた。
・・・説明って言っても、手紙に書いてあった内容で全てなんだが?それにその他は出来る事なら秘密にしておきたいところだが、それは後日考えよう。
とりあえずその事は後日考える事にして、今回の件をマリエル様に説明をしてから数人の使用人か誰かをこの地に来るようにお願いした。幸い俺達の居るログハウスには、簡易転移門があるのでそれを通って来てもらい合流する事にして貰ったのだ。
それでこのログハウスを拠点として、2、3日は滞在して貰う様に話はつけておいた。
結局のところ俺がいつもの停止時間帯よりも早く動ける様になったので、俺とミーアは2人で視察の続きを行なう事にしたのだ。
「お兄ちゃん!メグミお姉ちゃんに一言話して出発しないでいいの?」
流石にミーアも出発の前に、メグミさんの事が気になったらしく声をかけてきた。
しかし、俺としては今現状彼女に捕まる訳には行かない。それは実を言うとその部分を未来視で確認しており、出発の挨拶をしに行ったら、目を覚ましている数人のハーフ亜人の娘達に、うっかりメグミさんが俺の事を、そう今回の処置についての事を話してしまい大変な事になってしまうのが解っていたからあり、それを回避する為にその場に行かないようにしていたのであった。
「いや、いい!今行ったら大変な事になるから、その話は使用人の娘達に任せるから・・・」
流石のミーアも俺のゲンナリとした表情を見て、納得してくれたので助かる。まあ別にメグミさんとは今生の別れという訳ではないし、どの道3日後にはあえるので良しとしよう。
「ミーアが疲れてないなら今日中に正門付近まで行きたいんだが?どの道この先は殆ど住民がいないから・・・」
「えっ、ミーアは別に問題ないよ。元々今日中には行けないと思ってたけど、お兄ちゃんが大丈夫なら・・・」
ミーアは移動に対して問題が無いようなので、引き続き視察を行なう事にした。まあ実際ミーアは俺が色々と処置を行なっている間に、休憩を取り昼食も食べていたので問題は無いとの事だった。
そして俺とミーアは順調に進んで行き、夕方前には正門の前までやって来たのだった。
第十二章:第十七話につづく




