第十九話
ただ、この事の意味がこの後に判明する事になったのであった。
実は先程の事が殆ど訳も解らず、詳しい事情を聞こうとしたのだが、何故かティナがすぐに俺とミアちゃんの間に入りこの場を遮られ、その後ティナとミアちゃんの2人から、この部屋から追い出されてしまったのである。
それで、しかなくここの、そう神界にある元フィーナ様の部屋に行く事にして、その部屋に向かって通路を歩いていると、先程追い出された部屋からは何故かは解らないが、すごく賑わった声が響いてきたのである。
「・・・・えっ、嘘でしょ!・・・・そんな事が?」
「・・・きゃぁぁ・・・、ホントですか?・・すごいすごい」
「・・・マジかよ。あいつ、いやいや、あの方が・・・」
「・・・へぇぇっ、そなんですか?」
「「「・・・・」」」
その声は殆どが女性陣であり、おそらく先程、自己紹介をしていた面々が殆どだと思われた。
「なんか、仲間はずれにされたのがちょっと悲しいような・・・それになんか俺の事を言われてるようで、すごくくすぐったい様な感じがする。なんで俺は追い出されたんだ?」
そんな事を思って、足を止めてその声を詳しく聞こうと聞き耳を立てた。
「それで・・・ユウマ・・・なんですよ!」
「キャー、キャー!・・・・」
「・・・だからフィーナ様の・・・・それにリンカさんとシルフィーさんも一緒の・・・・!?」
「イヤーン、ホントに・・・・スッゴーイ!」
先程から途切れ途切れ、聞えてくる声の中には、ユウマ自身の名やフィーナ様達の名が時々聞えてくる。しかもその前後で『キャー!』とか『イャァーン』とか『スッゴーイ』などみんなが声を揃えて叫んでいたのである。
「しかもなんか、俺とか色んな娘の名が聞えて来るんだけど、それにワァーワァー、キャキャと物凄く騒ぎ出したんだが・・・この騒ぎ方は半端じゃないんだけど?どう言う事だ。しかも俺抜きで・・・!?あれ?突然音が遮断された・・・そんなに俺に聞かれるのが嫌なのか?」
そのような状態の部屋にユウマが聞き耳を立てたのだが、はっきり言ってそれ以上は聞えてこなかった。というより途中からどうやら音声を遮断する処置を、誰かが行なったようであった。
ここで、もう1度先程の部屋に戻ろうかとしたら、そのみんなが騒ぎ出した部屋の入口から視線を感じたので振り帰りそちら側を向いてみた。
するとそこには・・・先程この場所である神界に来た女神候補の娘達が、しかも何故かそっとこちらを覗いて、ジッとこちらに視線を向けていたので・・・その部屋に戻ろうとしたが、戻ることを躊躇ってそのまま回れ右をしてフィーナ様の部屋へ静に歩いて向かった。
「いったい、なんなんだ?物凄い視線を感じる・・・。とりあえず早くフィーナ様の部屋に逃げ込もう。下界に戻ってもいいけど、流石に3人を置いて帰ったら何を言われるか解んないから、とりあえず大人しく待っておこう・・・」
一旦視線が緩んだと思ったが、ユウマが振り返って歩き出すと、今度は先程と比較にならない程の視線を感じて、気が付かれない様に早足でフィーナの部屋に向かい飛び込んだ。
しかし、さっきのはなんだったんだ?俺が何かしたか・・・いや、あの娘達には、まだ何もしてないと思うぞ?いや、手は出す気は無いけど。
そうこの時ユウマが不思議に思っていた少し前に、ユウマが応接室を出た直後に、先程の説明を残っていたみんなに強要されてミアちゃんが、他の娘達に聞かれても良いかと思い。ティナと相談して、しょうがなくその理由を詳しく説明して、暴露していたのである。
その説明を聞いたとたんに、いっきに女神候補の娘達とその場に居たティナと守護天使達が打ち解けていたとは、ユウマは知らないのであった。しかも、この後にユウマが考えもしなかった、とんでもない事も起きるとは考えていなかったのである。
それと、この時点で1つ忘れていた事があった。それは例の聖竜の卵の存在を、完全に忘れていた事に、今更ながら気が付いた。
実際フィーナ様の修行の旅に連れて行く事が出来ずティナに任せていたが、その事を確認する事を忘れていた事を思い出した。
まっ、その卵に関しては、先程は気が付かなかったがフィーナ様のベッドの上にあるクッションと一緒に転がっていた。というよりベッドの上でコロコロ転がっていた。
「これって、ホントに卵だよな。実はこれが既に個体として成り立ってないか?・・・そう言えば創造神様は3つの生命が同時になんチャラとか言っていたような。どう言う意味だ・・・結局?」
ユウマはこの時あんまり深く考えず、フィーナのベッドでひと休みする事にしたのである。
・・・・・。
それから実際どれだけ寝ていたか解らないが、どうやらユウマが熟睡して寝ている間にフィーナ様とリンカ、それにシルフィーが戻って来ており、一緒のベッドで数名で寝ていたのである。
それで気持ち良く寝ていたユウマの顔に、何かが触れたので目を覚まし、3人の顔が視界に入った。
「・・・あれ?3人共、いつの間に戻って来てたんだ?ふぁあぁぁっ・・・???」
まあ、確かにここにあるフィーナ様のベッドは、超キングサイズで4人が一緒に寝ても問題ない大きさである。そこに4人と後、聖竜の卵と小さなお子様の2人が一緒に寝ていたのであった。
ユウマは欠伸をしながら、寝ぼけ眼をこすり周囲を見て言葉を漏らした。
「いつの間にと言うより、3人は・・・まあ、解るのだが、何故にフィーナ様の妹である双子のフェリエちゃんとフィリエちゃんまで・・・なんでここに来て一緒に寝てるんだ?」
このベッドの上では、ユウマがど真ん中で寝ているので、それを囲む様にシルフィーとリンカがユウマの胸の辺りを枕代わりして、フィーナ様がユウマの顔・・・いや、頭に抱きついて胸を押し当てた状態であり、すやすやと寝ているのだった。そこまでは何となく理解は出来るのだが、お腹の上に双子が乗っかって寝ているのがよく解らなかった。
その様子を見て不思議に思ったが、まあ、みんな疲れて寝ている様なので、起こさない様にその場を静かに抜け出し、ユウマは部屋を出て行った。
「ふあぁぁっ、しかし、いつ戻って来たんだろう。起してくれれば良いのに・・・ん?そういえば、やたら静過ぎないか?それにあれだけ忙しそうに働いていた守護天使達の姿が見えないし、明かりがあんまり付いてない・・・?」
そうこの場所では普段の状態から考えると静過ぎて、各部屋が色々ある中で元から扉がある部屋以外は、全ての明かりが消えていたのである。
それに昨日の状態から考えたら、余りにも人の気配・・・いや、天使の気配が少ないし殆ど感じない。
まあ、まったく守護天使達がいない訳ではない。それを踏まえても余りにも静過ぎで、忙しなくいつも働いている守護天使達の姿が、殆ど確認が出来ないのであった。
「あれ?どうなってんだ?今迄ここに来て初めてだな・・・こんな状態は?・・・あっ!?」
そこにちょうど欠伸をしながらミアちゃんが、こちらに向かって来て俺に気付き話し掛けてきた。
「あっ、ユウマさんお目覚めになったのですか?余程疲れていたんですね。あの後フィーナ様達が帰って来て、起こしにいったんですが、なかなかお目覚めにならなかったので・・・」
「えっ、そうなの・・・まあ、確かに、ここ数日まともに寝た記憶が・・・・」
そう言えば、今迄殆ど睡眠を取らずに色々やってたような・・・・。
「それにフィーナ様達も戻って来てから、宴を一緒に開いて騒いでましたし、その後、お部屋に戻ったのですが、余程疲れていたんでしょうね。ユウマさんと一緒にそのまま寝てしまいましたから皆さん・・・。それに今回の宴も少し前まで行なってましたから今は静かなモノですよ。なんだか昔に戻った気分です」
なるほど、多分俺が寝た後、ぐらいにみんな戻って来たのだろうな。しかし、そっちの方は解ったけど、この静けさは当たり前なのか?
この静けさが余りにも不思議なので尋ねる事にした。
「なあ、ミアちゃん。フィーナ様達の事は解ったけど・・・ここの、この静けさは普通なのか?今迄で初めてなよ感じなんだが」
「あっ、これですか。・・・実は、ここ最近というより、大昔前まではこの静けさが当たり前ですよ。まあ、ただ今回は、昨日フィーナ様達が戻って来た後に、今回の全ての作業が完了して・・・その、あとまたちょっと色々ありまして宴が始まりましたから、まあ、これは少し久々に異常な静けさですがね・・・」
そう今迄ユウマが訪れた時の殆ど忙しい状態であり、普段は余程の事がない限り、このような静かな状態はないらしい。ただ一昔前は、この状態が数日は続くのだが、最近は殆どこの様な静けさは無かったようである。
何故今回これだけ静かな状態かと言うと、それはユウマが昨日までに、殆どの作業を終らせていたので、久しぶりにこの神界で今迄に無い静けさを取り戻していたらしいのである。
どうやら普段と様子が違っていたのは、そう言う事なのだが、当然その事はユウマも知らない事であった。ついでに言うと最近まで忙しなく動き回っていたのは、殆どがマリエル様の加護する大陸で起こっていた事が原因であり、その対処で実を言うと後何ヶ月かは、忙しいその状態が続く予定だったが、それもすべて終わり収束して解決していたのである。
それでその事がユウマがフィーナの部屋に行った後に解り、守護天使達もこの時は久々に大喜びをして宴が始まり、それが今朝方まで続き、今はみんな寝てしまい静けさを取り戻しているそうなのである。
「なあ、ミアちゃん!なんで宴が始まる事になったんだ?まあ、百歩譲っても今回来た娘達の歓迎会は、解るが先程の言い分じゃ、どうも宴自体はフィーナ様達が絡んでるみたいな言い方だったんだが?」
なんで静かな時間が取れるのに、休息を取らず宴をする事になったのかが、ユウマは解らずそれを確認しようとすると、ティナがいつの間にか側までやってきており、俺達に挨拶をした後に声を掛けてきた。
「あっ、それは私が説明をするよ。お兄ちゃん!とりあえずフィーナ様の部屋に行こう」
守護天使であるミアが言い難そうにしていると、ティナが見かねて自分が説明するから、フィーナ様達の所に行こうと言ってきたのである。
「はっ、どう言うこと・・・?」
実際この状況が普通と違う事は解るが、何故フィーナ様の部屋で?・・・しかも、どうやらフィーナ様達の事も絡んでいる様なのであった。
仕方なくティナとミアちゃんの、後ろについてここまでやって来た道を戻って行ったのであった。
第十章:第二十話につづく
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それで、フィーナ様の部屋に入ると、ちょうど目を覚ましたばかりのフィーナ様とリンカ、それにシルフィーがいた。




