第九十七話
俺が期待を寄せてそちらに視線を向けたまま、そちらを見ていると何時のまにかロンとミーアがすぐ近くまで戻って来たのであった。
何故かミーアは俺達の側に来て声を掛けてきて、信じられない事を語り掛けてきたのであった。
「あっ、お兄ちゃん、あいつもう少ししたら、さっきの奴完全に動けなくなると思うよ。それでどうするの?それとすごいねあそこの感じは・・・」
「へっ、ミーア?」
はっ、いやいや、流石に早すぎるだろうがミーア達の方は、まだ、そこまでの状態じゃ・・・?
それでミーアに言われて、そちらの方に視線を向けてみると、既に先程まで禍々しい邪気を放っていた魔神の姿はなく、俺達が最初に見たときの姿、魔王と名のっていた時の姿に戻っていたのである。
そう角の生えたガタイのいい魔人族の姿へ、その魔人族がランにいいようにされていたのであった。
「兄貴、あいつ途中からどんどん弱くなってしまいまして、今はあのとおり最初の姿に戻ってしまいました。・・・・どうしましょう。流石にこれ以上やったら弱い者いじめになりそうなので、今はランに任せてますけど、もうすぐ完全に・・・」
いやいや、ロンさん既にあの魔神だった奴はボロボロになって気絶してますよ。しかもランはその状態が解ったのか、銜えてこちらに持ってきちゃったよ・・・。
時間はホンの少し戻り、ユウマと雪姫がミーア達の戦闘から視線を融合進化中の魔神へ向けていた後、数分間は先程の状態で一方的な戦いが続いていた。その後ある程度してから戦闘は急展開が起こっていたのである。
☆~・・・・~☆
それは戦闘が有利なのは・・・・まったく変わらなかったのだが、ミーアとランが近接攻撃を続けている中で、ロンがユウマに頼まれていた事を、実はミーア達に伝え忘れていたのを思い出した。その為もう少しでミーア達が魔神ドロスに止めを刺してしまう手前だったのである。
「ああ、わっ、わぁぁlちょっ、ちょっと、ミーア、ラン!スッ、ストップ、ストッープ!」
それで慌ててロンは、ミーアとランが止めを刺そうとしていたその前に飛び出していった。流石にこの行為にビックリしたミーアとランは、慌てて止めを刺す行為を止めたのである。
《ガキョョッンッッ!》
普通では考えられないような、音が鳴り響いた。まあ、その音に関してはユウマ達が気付く事はなかった。
「えっ?もう、ロン兄ちゃんなに?何で止めるの?それに、ビックリするじゃん!危ないじゃん」
ミーアは泡を吹いて気絶している魔神ドロスに止めを刺すために、魔双短剣ミルドラクローレインを短剣に戻し魔神の首を狩ろうとしていたところを、ロンの龍氷魔槍杖ドライグノードの柄の部分で止められた事に驚いて、少し怒りぎみで声を掛けた。
『ガッ!?・・・ガウガウ?』
ランの方もいち早くロンの声を聞き、すぐに攻撃をやめて体制を立て直していた。
「ミーア達に、兄貴から頼まれてた事を伝えるのを忘れてた。こいつ殺しちゃったらいけなかったんだよ」
ロンがユウマから頼まれていた事を、ミーアとランにこの時点で説明していたのであった。
それでロンとミーアが話している間に、瀕死で泡を吹いて気絶していた魔神ドロスが目を覚ましていたようだ。
『・・・うっ、ううっ、わっ、われ、我は・・・うっ!』(こっ、これはっ、あっ、ああ、あいつらは、ばっ、化け物か、このままじゃころ、殺されてしまう。我が気絶してると思われている今のウチに、このスキに、にっ、逃げなくては、我は死に、死にたくない。これは我に邪神様が与えてくれた最後のチャンスなのでは・・・今のウチに、こっ、このスキに・・!?)
どうやら自分が手を出した者達が、とんでもない化け物だと思って後悔していた。それであまりの恐怖でこの場から逃げようと考えていた様なのである。それで今の状態は好機と思ったのか、さっさと2人と1匹に気が付かれないウチに、どこかに逃げ出そうとしていたのだが・・・。
「ロン兄ちゃん!あいつ気が付いて逃げようとしてるよ」
「ん、ああ、でも大丈夫だよ。拘束の魔法を掛けてるからね。それにもう1度眠って貰わないといけませんから、ふっふふふっ、はぁぁっ、はははっ・・・」
この時点で実は魔神ドロスは逃げ出せない状態になっていた。それは目が覚めても身体を動かす事が出来ずにいたのである。
しかも、ジワジワと相手の魔力を吸い取っていたのであった。
ただし、そのロンを間近で見ていたミーアとランには、どちらが魔神か解らなくなっていた。
「うわぁぁっ、ロン兄ちゃん・・・なんだか悪役みたい。それに物凄くエゲツナイ事を考えてる顔だね。ねぇ、ラン」
『ガァウっ・・・』
何せ先程までミーア達が戦っていた魔神ドロスと似たような感じで、ロンが高笑いをしていて、しかも止めを刺さないしても、相手の魔力を徐々に奪っているのが目に見えていたからであった。
それでロンが魔神ドロスの魔力を吸収していると、変化が見え出した。それは魔神であった姿が徐々に変化しだしたのである。
まずその変化が現れえ出したのは、魔神ドロスが放っていた邪気がなくなってきたのである。
『ウガガガガッ、ウガッ、こっ、これは?かっ、身体が・・・!?』
その悲鳴にも似ている叫びと共に魔神ドロスの身体より、黒い蒸気が立ち昇ってきったのである。
「ロッ、ロン兄ちゃん!あれってやばいんじゃないかな?」
「えっ・・・・うっわわわっ」
ロンはミーアに言われて、驚き今迄魔神ドロスを拘束していた魔法を慌てて解いた。
しかし、その行為は既に遅く魔神ドロスの身体は、既に魔神としての身体が維持できず・・・元の魔人族、魔王の姿に戻ってしまっていたのである。ただし、魔神の時に負っていた傷と、何故か魔力が回復していたのであった。
「・・・?えっと、これは、どう言う事だろかな」
「えっと・・・・どうも、本人も解ってないみたいだよ。ロンお兄ちゃん」
元の魔人族の姿に戻った魔王ドロスは、自分に起こった事がさっぱり解らず混乱している状態であった。
それはそうだろう先程までは、散々ボコられてボロボロで体力は疎か、魔力もない状態だった。それが魔神の姿から元の角付き魔人族の姿に戻ると全てがなかったように回復していたからであった。
しかし、魔王ドロスはその時に不思議がっていないで、さっさと逃げ出していればもしかしたら、先程と同じ目にあわずにすんでいたかもしれない。だが、回復した事で今のミーアとロン、それに聖魔狼のランに勝てるかもと勘違いして再び戦いを挑んでいたのである。
その結果は、先程の状態と変わらなかったが、今回掛かった時間はホンの数分で決着がつき、現状にいたっていたのであった。
☆~・・・・~☆
それで、そんな事があったとはユウマは知らず唖然と、ランが銜えて持ってくるボロ雑巾みたいな角付き魔人族、魔王ドロスの姿を見て、半分同情していたのであった。
第九章:第九十八話につづく
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その光景を見ながらユウマは少し反省をしていた。




